2024年10月23日 | 公開 |
AWGはAmerical Wire Gaugeの略で、アメリカで使われる、断面が円形の非鉄金属線の太さの規格です。日本語では、米国ワイヤゲージ規格といいます。
アメリカでは、電線の導体部分の太さは、このAWGで表されます。
任意波形発生器(Arbitrary Waveform Generator)の事もAWGと呼びますが、このページでは、米国ワイヤゲージ規格の説明をします。
金属線の太さを表す時は、AWG 20やAWG 30など、"AWG"の後に番号を書き、表します。番号が小さい程太い線を表します。
AWG 0より太い場合は、AWG -1、AWG -2…とはせずに、AWG 00、AWG 000…と、0の数を増やします。AWG 0はAWG 1/0、AWG 00はAWG 2/0、AWG 000は AWG 3/0…という具合に、AWG (0の数)/0という表記を使う事もあります。
このAWG番号(AWGの後に書いた番号)と金属線の太さの関係を、表1に示します。
AWG番号 | 直径 [インチ] |
直径 [mm] |
断面積 [mm2] |
銅線1mあたり の抵抗 [mΩ/m] |
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米国ワイヤゲージ規格では、金属線の直径をインチ単位で規定していますが、日本人はインチには馴染みがないため、表1では、直径をmmに換算した数値も載せています。
断面積は、金属線の断面積を、直径の2乗にπ/4(πは円周率)を掛けて求めた値です。
銅線1mあたりの抵抗は、銅の抵抗率を、JIS C-3001-1981(電気用銅材の電気抵抗)に記載されている、標準軟銅の0.017241Ω·mm2/mという値とし、銅線の1m当たりの抵抗を計算した値です。mΩ/m(Ω/mの1/1000)という単位で数値を記載していますが、1mΩ/m=1Ω/kmなので、単位を読み替える事で、銅線の1km当たりの抵抗値が求まります。
米国ワイヤゲージ規格では、AWG 0000(AWG 4/0)の線の直径が正確に0.46インチと規定されています。また、AWG 36の線の直径が、正確に0.005インチと規定されています。これら以外のAWG 番号の線の直径は、等比数列をなす様に決められています。AWG 36はAWG 0000より39段階細い線なので、AWG番号が1つ増えると、線の直径は390.0050.46≒0.890526倍になります。
線の断面積に関しては、AWG番号が1つ上がると390.0050.462≒0.793036倍になります。
この数字を3乗すると約0.498745と、ほぼ0.5倍になります。そのため、AWG番号が3つ増えると、線の断面積が約半分になります。
線の抵抗は、断面積に反比例しますから、AWG番号が1つ増えると390.0050.46−2≒1.26098倍になります。AWG番号が3つ増えると、抵抗は約2倍(より正確には約2.00503倍)になります。
日本では、電線の導体部分の太さは、断面積をmm2の単位で表示する事が多いです。JIS規格(日本産業規格)でも、電線の導体部分の太さは、断面積で表されています。
断面積の表示だと、太い電線ほど数字が大きくなります。これは、私たちの直観に合っています。
一方で、AWG番号で電線の導体部分の太さを表すと、太い電線ほど数字が小さくなり、直観に反します。どうしてこうなったのでしょうか?
細い金属線を作る時は、太い金属線を引き伸ばして細くする、伸線加工を行います。
図1に、伸線加工を行う伸線機の概念的な説明図を示します。
この図に示す伸線機は、極端に簡略化されています。実際には、ダイスに通す前の金属線に潤滑剤を塗る潤滑ボックスや、加工で発生する熱を除去するための冷却器等が付いています。
伸線加工では、伸線機を使って、ダイス(伸線ダイス)と呼ばれる小さな穴の開いた金型に、金属線を無理やり通す事で、金属線を引き延ばし、直径を少し小さくします。
ダイスの断面形状とダイスの働きを説明した図を、図2示します。
この図に示す様に、ダイスの入り口は、伸線加工前の太い線が入るような、大きな直径の穴になっているのですが、ダイスの中では、加工前の線の直径より細くなっています。ダイスに金属線を無理やり通す事で、線の直径がわずかに小さくなります。
線が細くなるといっても、いきなり直径を半分にする事はできませんから、元の金属線の太さと、欲しい金属線の太さに大きな差がある時は、一度伸線機を通して少し細くし、もっと直径の小さなダイスの付いた伸線機を通して、さらに少し細くし…という具合に、何度も伸線して、段階的に線を細くしていきます。
この様に連続して伸線機に掛ける場合、ダイスに線を通すごとに少しずつ線が細くなりますが、AWG番号は、線をダイスに通す回数に対応しているのです。こういう理由で、AWG番号が増えるごとに、線が細くなります。
電線などの金属線を利用する人にとっては、その線がダイスを何回通って作られたかという事には興味がないのが普通です。AWG番号は、金属線の製造者の視点で定められているといってもいいかも知れません。
電線には、金属線を1本使った単芯線(単線)と、細い金属線を撚り合わせて作った撚線があります。(図3、図4参照)
図4に示す様に、撚線の導体部分は、素線と呼ばれる細い金属線が何本か撚り合わさってできています。これらの素線の断面積の合計が、単芯線の断面積と等しければ、撚線と単芯線の1mあたりの抵抗は、ほぼ等しいと考えられます。
注:撚線の素線は、お互いに撚り合わされるため、螺旋状になっています。そのため、電線の長さに対して、その電線の中の1本の素線の長さは、わずかに長くなります。この影響で、厳密には、断面積が同じでも、撚線の方が単芯線よりも、1mあたりの抵抗がわずかに高くなります。
AWG番号は、本来は撚線の太さの表示をするものではありませんが、その撚線と断面積が同じ単芯線のAWG番号を使って、撚線の太さを表記する事があります。
例えば、撚線を構成する素線の断面積の合計が約1mm2なら、AWG 18相当の撚線と呼びます。(AWG 18の単芯線の断面積は1.024mm2)
断面積が同じなのですから、AWG 18相当の撚線の、導体部分の見かけの直径(図5参照)は、AWG 18の単芯線の導体の直径よりも大きくなります。
この様に、同じAWG番号で比較すると、撚線の方が、単芯線より、導体部分の(見かけの)直径が大きくなる現象は、ワイヤーストリッパーで、電線の被覆を剥く時に問題になります。
写真1は、あるワイヤーストリッパーの刃の部分を撮影したものです。
写真を見ると、ワイヤーストリッパーの穴の左右に数字が書いてあります。左の数字は、単芯線の被覆を剥く際に、適合する線のAWG番号です。右の数字は、撚線の被覆を剥く際に、適合する線のAWG番号です。
例えば、一番下の穴は、単芯線だとAWG 18の線に、撚線ならAWG 20の線に適合します。
同じAWG番号なら、撚線の方が、単芯線より、導体部分の(見かけの)直径が大きくなるので、導体部分の(見かけの)直径が同じなら、撚線の方が、単芯線より断面積が小さくなります。つまり、AWG番号が大きくなるのです。そういう理由で、同じワイヤーストリッパーの穴なら、撚線は、単線よりAWG番号が2だけ大きい線に適合する事になります。(写真を見ると、穴の右側の数字は、左側の数字より、全て2だけ大きくなっています)
ワイヤーストリッパーを使う時に、撚線の場合は単芯線のAWG番号に2を足した数を目安に穴を選ぶというのは、撚線の構成(細い素線を多く使うか、太い素線を少なく使うか)にもよりますので、あくまで目安ですが、覚えておくと役に立つでしょう。