2018年07月05日 | 更新。 |
抵抗とは抵抗器の略で、所定の抵抗値(電圧と電流の比)を得るために使う電気部品・電子部品の事を指します。簡単に言うと、電流の流れ具合を調整するための部品です。
抵抗値の事も単に「抵抗」と呼ぶ事があり、「抵抗」が抵抗器を指すのか抵抗値を指すのかは、文脈から判断する必要があります。
このページでは、抵抗器の説明を中心に、抵抗値の説明も含めて説明します。
抵抗器は通常2端子の部品で、図1に示す回路記号を使って表します。
以前は図1(a)の記号を使っていましたが、1990年代後半にJIS記号が改訂され、図1(b)の記号を使う決まりになりました。
このJISの改定は、TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)に順守するために行われたものです。世界的に、抵抗器の回路記号を図1(b)に統一する流れではありますが、図1(b)の記号を使った文書もまだたくさん存在し、現状では両方の記号が使われています。
長年図1(a)の記号になじんできた技術者には図1(b)の記号を使うのに抵抗がある人も多く、新しく刊行される技術書でも、図1(a)の記号を使い続けている物が少なくありません。
注:当サイトにおいては、図1(b)の記号は意味が不明瞭であるため(ブロック図においては、四角形の記号は抵抗ではなく、任意の回路ブロックの意味で使われる事がある)、このページを含めて、図1(a)の記号を用いています。
多くの物質において、外部から加える電圧Vと流れる電流Iは比例します。(図2参照)
式で表すと、次の様になります。
ここで電圧Vと電流Iの比例係数Rの事を抵抗値といいます。SI単位系(国際単位系)では抵抗値の単位にはΩ(オーム)を使います。また、式(1)の関係をオームの法則と呼びます。
参考:電圧および電流の単位は、SI単位系ではそれぞれV(ボルト)とA(アンペア)です。
式(1)を変形すると、式(2)が得られます。
Rの値はVやIの値によらず一定ですから、(0以外の)任意の電圧Vを加えたときの電流Iを測定し、式(2)に示した様に、VをIで割れば、抵抗値Rが求まります。
電圧Vと電流Iの関係を、横軸を電流に取ってグラフ化すると、図3の様に直線のグラフになり、この直線の傾きが抵抗値Rになります。
このグラフから分かるように、抵抗値Rが大きいと、高い電圧を加えても電流が少ししか流れず、電流が流れにくくなります。つまり、抵抗値は電流の流しにくさの程度を表す数値だと考える事ができます。
抵抗器(に限らず電子部品)は、両端にかかる電圧Vと流れる電流Iの積で表される電力(単位時間当たりの電気エネルギー)を消費します。抵抗器において電力を消費するとは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換することを指します。つまり、電気エネルギーを失ってしまう代わりに、抵抗器が発熱するのです。この時に抵抗に発生する熱をジュール熱といいます。
抵抗が消費する電力をPとするとPはVまたはIから、次の式で求める事ができます。
電力の単位は、SI単位系ではW(ワット)です。
式(3)から分かるように、抵抗器が消費する電力は、電圧あるいは電流の2乗に比例して増加します。抵抗器にあまり高い電圧をかけると(大きな電流を流すと)、発熱により温度が上昇し、抵抗器が故障してしまいます。そのため、抵抗器には、安全に使う事のできる消費電力の限界(定格電力)が規定されています。
ここでは、電子工作に使う比較的小型の抵抗器の種類について説明します。
抵抗値が固定の抵抗器を固定抵抗器(あるいは固定抵抗)といいます。通常は2端子ですが、集合抵抗と呼ばれる、数個の抵抗器を1つのパッケージに収めた物には、多くの端子があります。
形状の面では、リード線が付いたリード抵抗と、基板に表面実装するためのチップ抵抗に分類できます。
リード抵抗はリード線(銅線)が付いた抵抗器で、手半田向きで、初心者でも半田付けしやすいという特長があります。チップ抵抗と比べると、形状が大きい分だけ、定格電力が大きくなります。
電子工作によく使われる最も良く使われるリード抵抗は、カーボン抵抗(炭素皮膜抵抗)です。抵抗体として炭素系素材の皮膜を用いています。安価で入手性がいいのですが、抵抗値の精度や温度係数があまり良くありません。抵抗値の精度(許容誤差)は通常5%です。
高精度の抵抗器が必要な場合には、金属皮膜抵抗(キンピ抵抗)がよく使われます。抵抗体として金属の皮膜を用いています。カーボン抵抗に比べると価格がやや高く、入手性もやや悪いですが、抵抗値の精度が高く、また温度係数が低く、正確な抵抗値を得たい用途に向いています。精度は通常1%か2%の物が広く流通していますが、0.1%程度の高精度の物もあります。
やや大きな電力を扱う場合は、酸化金属皮膜抵抗(サンキン抵抗)や、セメント抵抗がよく使われます。酸化金属抵抗は、抵抗体に金属酸化物の皮膜を用いています。セメント抵抗は、巻き線抵抗(後述)または酸化金属抵抗をセラミックのケースに入れ、セメントで封止した物です。大きな電力用の抵抗器は、入手性が悪く、目的の抵抗値の抵抗器を手に入れるのが困難な場合があります。特に高精度の抵抗器を使う場合は、特注しなければならない事があります。
巻き線抵抗は、セラミックの棒に金属線巻きつけた構造をもつ抵抗器です。比較的大電力用途に使え、高精度の抵抗器も作れます。
チップ抵抗は、表面実装する事を前提とした、リード線のない小型の抵抗器で、通常は長方形です。(写真4参照) リード線がない事や、カーボン抵抗、金属皮膜抵抗、巻き線抵抗などにあるコイル状の構造がない事から、寄生インダクタンスが少なく、高い周波数まで純粋な抵抗として動作するという特長があります。一方で、形状が小型であるため、定格電力は大きく取れません。表面実装しなければならないことから、電子工作の初心者には扱いにくい部品だといえます。
チップ抵抗の半田付けについては、Arduinoとホットプレートを使ったリフロー装置(1号機)の製作(2)に詳しく載っています。
左から3216サイズ、2012サイズ、1608サイズです。チップ抵抗のサイズについては、チップ部品のサイズとサイズの名称についてを参照してください。写真に写っている定規の1目盛りは1mm間隔です。
抵抗値は左から順に、100Ω、100Ω、2kΩです。
形状が小さい物ほど定格電力が小さくなります。定格電力は、左から1/8W、1/8W、1/10Wとなっています。(一番左のチップ抵抗は、かなり古いので形状の割には定格電力が小さくなっています) 一番よく流通しているカーボン抵抗の定格電力が1/4Wですから、それよりも小さな電力しか消費できないことが分かります。
チップ抵抗をはじめとするチップ部品は、携帯電話等の小型携帯機器の普及とともに発展してきました。チップ抵抗は高周波においても理論通りに抵抗として動作する特長があり、携帯機器の小型化のみならず、高周波化にも大きく貢献してきました。
つまみ等が付いており、抵抗値を調整できるようになっている抵抗器を可変抵抗器(あるいは可変抵抗)といいます。可変抵抗器には2端子の物と3端子の物があります。
3端子の可変抵抗器の回路記号を図4に示します。
3端子の可変抵抗器は図4のaの端子とcの端子の間の抵抗値が一定になるように作られています。可変抵抗器の抵抗値の表示も、このa端子とc端子の間の抵抗値を表示する事になっています。
一方で、a端子とb端子の間の抵抗値や、b端子とc端子の間の抵抗値は、つまみを回したり、スライダーをスライドさせるなどして変化させることができます。
直列に接続した2本の抵抗器は、それらの抵抗値の和の抵抗値を持つ1本の抵抗器と等価ですから(図5(c)参照)、a端子とb端子の間の抵抗値をRab、b端子とc端子の間の抵抗値をRbc、a端子とc端子の間の抵抗値をRacとすると次の式が成立します。(図5(a)と図5(b)参照)
2端子の可変抵抗器は図4の端子cが省略され、aとbの2つの端子だけになったものと考えられます。
可変抵抗器は日本語ではボリュームと呼ぶ事が多いですが、英語圏では2端子の可変抵抗器をレオスタット、3端子の可変抵抗器をポテンショメータと呼びます。日本でポテンショメータというと、高回転型や角度検出センサに使われる高精度の物を指す場合が多いです。
可変抵抗器の中でも、特に機器の調整用に設計されており、抵抗値を調整する際にドライバ等の工具を使う物を半固定抵抗器(あるいは半固定抵抗)と呼びます。(写真6参照) 半固定抵抗器はトリマ抵抗とも呼ばれます。半固定抵抗器は、回路の製作直後の調整時にのみ抵抗値を調整し、使用時には抵抗値を固定して使う事を前提に設計されているため、前述の様にドライバ等を使わないと抵抗値を変えられないように作られている事がほとんどです。また、抵抗値を調整できる回数も数回ないし数十回程度しか保証されておらず、テレビやラジオの音量調整のボリュームの様に、頻繁に抵抗値を調整する用途には使えません。
左側は、半固定抵抗器を上面(調整用のドライバを差し込む溝がある面)から見たものです。溝の形状が工夫してあり、プラスドライバもマイナスドライバも使えるようになっているのが分かります。上の「103」は、抵抗値を表しています。10×103Ω、すなわち10kΩの半固定抵抗器です。
右側に写っているのは、左側の半固定抵抗器を裏返した物です。少し見にくいですが、上と右下と左下に、3つの電極があるのが分かります。