しなぷすのハード製作記

「液晶ディスプレイ」の解説

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2016年08月10日 更新。
用語:液晶ディスプレイ
読み:えきしょうディスプレイ
同義語・似た意味の言葉:LCD
このページで解説している他の用語:反射型液晶透過型液晶セグメント方式ドットマトリックス方式COB型COG型

概要

意味・用法

液晶ディスプレイとは、個体と液体の中間の性質を持つ液晶と呼ばれる物質を用いた表示装置の事です。LCD(Liquid Crystal Display)ともいいます。液晶ディスプレイの事をを単に「液晶」と呼ぶ事がしばしばあるため、「液晶」という言葉が使われている場合、液晶を使用した表示装置を指すのか、物質としての液晶を指しているのかを、文脈から判断する必要があります。

参考:当サイトでは、意味が明瞭で文字数の少ない"LCD"という言葉を主に使っています。

ここでは、主に電子工作に使う液晶ディスプレイを中心に解説します。

構造・動作原理

液晶ディスプレイは、表示部である液晶パネルと、液晶パネルを駆動する電気信号を生成する駆動回路、それに必要な電圧の電源を供給する電源回路、さらに透過型液晶(後述)の場合はバックライト用光源などからなります。これらの部品が一つの部品として集積された物をLCDモジュールといいます。

液晶パネルには、構造や駆動方法などによりいくつかの方式がありますが、TN液晶を例に取って構造を図示すると、図1の様になります。

図1、液晶パネルの構造
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図1、液晶パネルの構造
ここに示したのは、モノクロのTN液晶のパネルです。カラー液晶の場合は、さらに光の三原色(RGB)のカラーフィルタが必要になります。

液晶層が、2枚の配向膜とその外側の2枚の透明電極付きガラス基板、さらに外側の2枚の偏光板に挟まれた構造になっています。

2枚の偏光板の偏光軸は直交していますが、透明電極に電圧をかけない場合、液晶層が透過光の偏光面を90度ねじるために、液晶パネルが光を通すことができます。(ON状態、図2参照)

ところが透明電極に電圧をかけると、電圧をかけた2本の透明電極に挟まれた領域の液晶の配列が変わり、液晶層を透過する光の偏光面をねじる効果が失われます。そのため、液晶層を通った光が偏光板でブロックされるようになります。(OFF状態)

この様に、液晶パネルは、印可電圧によって、光を通したり、通さなかったりという事が制御できるシャッターとして働きます。

図2、液晶層内部での偏光面の回転
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図2、液晶層内部での偏光面の回転

光が入射する側の偏光板は、a-a'方向の偏光面を持つ光しか通しません。一方で、反対側(出射側)の偏光板は、a-a'方向と直行したd-d'方向の偏光面を持つ光しか通しません。

液晶に電圧がかかっていない時は、液晶層の浅い部分から深い部分へと、液晶の配向方向が徐々に90度ねじれており、液晶層を通った光の偏光面も、それに従って、順にa-a'方向、b-b'方向、c-c'方向、d-d'方向と、徐々にねじます。そのため、光は出射側の偏光板を通り抜ける事ができます。(ON状態)

液晶に電圧がかかると、分極した液晶の分子の向きが、図の面と垂直方向(光の透過方向)にそろいます。そのため、偏光方向をねじる作用を失います。この時、入射側の偏光板によってa-a'方向に偏光した光は、偏光面がねじれることなく出射側の偏光板に達します。よって、光は出射側の偏光板を通り抜ける事ができません。(OFF状態)

反射型液晶と透過型液晶

液晶パネルは前述の様に、印可電圧の有無によって光を透過する状態(ON状態)と光を透過しない状態(OFF状態)を切り替える、一種のシャッターとして働きます。液晶自身が発光しないので、外部の光源を利用して表示を行います。

液晶パネルの一方の面に反射板を配置すると、周辺環境の光を反射して表示を行う反射型液晶となります。(写真1参照)

また、液晶パネルの一方の面にバックライト光源を配置し、反対の面に透過する光で表示を行う透過型液晶もあります。(写真2参照)

さらには、暗い環境ではバックライトを使い、明るい環境では周辺環境の光を反射して使う半透過型液晶もあります。

反射型液晶と透過型液晶の特徴をまとめたのが次の図になります。半透過型液晶は、反射型液晶と透過型液晶の特徴をある程度兼ね備えています。

写真1、反射型液晶を使ったArduinoのシールドの例
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写真1、反射型液晶を使ったArduinoのシールドの例
写真2、バックライト付き透過型液晶を使ったArduinoのシールドの例
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写真2、バックライト付き透過型液晶を使ったArduinoのシールドの例
液晶パネルの種類 長所 短所
反射型液晶 消費電力が少ない。明るい所でもはっきりと見える。 暗い所では、表示内容が見えにくい。
透過型液晶 暗い所でもはっきり見える。 バックライトが液晶パネルよりも電力を消費するため、消費電力が大きい。明るい所ではコントラストが下がり、表示内容が見えにくい。

セグメント方式とドットマトリックス方式

液晶パネルは、透明電極の形状により、セグメント方式ドットマトリックス方式に分類できます。

セグメント方式の液晶パネルは、数字を表現するためのいわゆる7セグメント(図3)やHz、kg、Vといった単位の文字、電池切れなどを警告するためのアイコンなど、あらかじめ決まった形状の透明電極を形成することにより、特定用途向けの画面表示を簡単に行える様に作られています。(写真3参照)

図3、7セグメント
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図3、7セグメント
A~Gの7つのセグメント(領域)をそれぞれ発色させたり、発色させなかったりして、0~9の10種類の数字を表示します。
写真3、デジタルマルチメータに使われているセグメント方式の液晶ディスプレイ
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写真3、デジタルマルチメータに使われているセグメント方式の液晶ディスプレイ
4ケタの7セグメントや小数点、符号、各種単位、動作モードを示す記号などのセグメントがあるのがわかります。

少数の電極で表示を制御できるため、駆動回路が簡略化され、また表示内容を保持するメモリが少なくていいという特徴があります。セグメント方式の液晶ドライバを内蔵したマイコン(ATmega169PAなど)を使えば、液晶パネルをマイコンに直結し、部品の削減やコストダウンを行う事ができます。

一方で、表示内容が特定用途に限定されるため、少数しか製造しない機器には使いにくいという欠点があります。

ドットマトリックス方式の液晶パネルは、格子状に並んだ多数の画素(ピクセルやドットともいう)を使って、表示したい文字や図形を表現します。(写真2参照)

写真2(再掲)、ドットマトリックス方式の液晶ディスプレイの例
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写真2(再掲)、ドットマトリックス方式の液晶ディスプレイの例
写真を拡大してみると、図形が細かい画素の集合として表現されている様子が分かります。

電極が多くなり、駆動電圧の波形も複雑化し、また表示する内容を記憶するメモリも大容量化するため、セグメント方式の液晶パネルと比べて、コスト的には不利になります。

しかしながら、プログラム次第で色々な文字や図形を表示できるという柔軟性・汎用性があります。趣味の電子工作で液晶ディスプレイを使う場合は、この汎用性の問題から、ほとんどの場合、ドットマトリックス方式の液晶ディスプレイが使われます。

セグメント方式とドットマトリックス方式の特徴を比較した表を次に示します。

セグメント方式 ドットマトリックス方式
表示領域の形状 あらかじめ決まった文字やアイコン。 格子状に並んだ多数の画素。
汎用性 表示内容があらかじめ決まっているため、汎用性は低い。 画素の組み合わせで色々な表示ができ、汎用性が高い。
コスト (大量生産すれば)安い。 高い。

液晶ドライバICと制御ソフトウェアのライブラリ

ドットマトリックス方式の液晶ディスプレイの場合、液晶パネル単体で供給される事はまれで、通常駆動回路などを含めて一つの部品に仕立てたLCDモジュールの形で供給されます。別のメーカーや型番の液晶モジュールでも、駆動回路内の液晶ドライバICが同じなら、制御するマイコン側から見ればソフトウェア的に同一の液晶モジュールに見える事が多くあります。(図4参照) そのため、液晶表示用のソフトウェアライブラリが液晶モジュールのメーカーの枠を超えて、共有できる事があります。

図4、マイコンでLCDモジュールを制御する回路の簡略化したブロック図
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図4、マイコンでLCDモジュールを制御する回路の簡略化したブロック図

マイコンがバス越しにコマンドを送る対象は液晶ドライバICなので、その他の部分(液晶パネル、電源回路、バックライト)が変わっても、ソフトウェア的には変更が必要ありません。ただし、液晶パネルの解像度などが変わる場合は、初期設定などを変更する必要があり、ソフトウェアに若干の変更が必要な場合もあります。

LCDモジュールの外部の電源回路は、マイコンやLCDモジュールに電源を供給する回路で、通常おおむね3~5Vの電圧を供給します。LCDモジュールの内部の電源回路は、昇圧回路によりLCDパネルを動作させるのに必要なバイアス電圧(十数V程度)を発生します。バイアス電圧は、液晶制御ICを経由して、液晶パネルに供給されます。液晶制御ICそのものは外部から供給された3~5Vの電源で動作します。

例えばArduinoLiquidCrystal Libraryは、キャラクタLCDモジュール(後述)用の液晶ドライバICとして広く使われているHD44780という液晶ドライバIC(およびその互換IC)用のライブラリです。多くのメーカーのキャラクタLCDモジュールがHD44780またはその互換ICを使っているので、LiquidCrystal Libraryを使ってスケッチ(プログラム)を作っておけば、ソフトウェアの変更なしで(あるいは一部の変更で)、LCDモジュールを差し替える事ができます。

キャラクタLCDモジュールとグラフィックLCDモジュール

ドットマトリックス方式の液晶モジュールは、文字を表示する事を主体にしたキャラクタLCDモジュールと、図形の表示を主体にしたグラフィックLCDモジュールに分類できます。

キャラクタLCDモジュールは、ASCIIコードなどの文字コードを受け取ると、該当する文字を画面に表示するタイプの液晶モジュールです。フォントデータを内蔵しており、受け取った文字コードを表示するビットマップに自動変換します。文字を表示する場合には、グラフィックLCDモジュールよりも簡単なプログラムになりますが、半面、画素を1つ1つ制御する機能はなく、図形を表示する事ができません。(写真4参照)

写真4、マイコンで制御したキャラクタLCDモジュール
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写真4、マイコンで制御したキャラクタLCDモジュール

この写真は、マイコンを使って組み立てた電卓の一部を撮影した物です。この様に、文字しか表示しない用途では、キャラクタLCDモジュールを使うとプログラムが簡単になります。

注:キャラクタLCDモジュールでも、一部の文字のフォントをソフトウェア的にプログラムできる様になっており、それを使えばまったくグラフィック表示ができない訳ではありません。キャラクタLCDモジュールを用いてバーグラフ表示した例として、air variableさんの作られたLCD オーディオレベルメーター(VUメーター)が挙げられます。しかしながら、キャラクタLCDモジュールのグラフィック表示の自由度は低く、またプログラムの手間も大変なことから、本格的なグラフィック表示を行う場合は、グラフィックLCDモジュールを使う必要があります。

グラフィックLCDモジュールは、画面を構成する画素を1ドット単位で制御できるLCDモジュールです。直線、円、長方形などの図形や、ロゴ・マーク・イラストなどを自由に表示する事ができます。(写真2参照)

写真2(再掲)、グラフィックLCDモジュールの例
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写真2(再掲)、グラフィックLCDモジュールの例
画素を組み合わせる事で、図形でも絵でも文字でも自由に表示できますが、表現の自由度が大きい分、プログラムが複雑になったり、大きくなったりします。

通常はフォントデータを持っていないため、文字を表示するにも、その文字の形を、マイコンからビットマップで転送する必要があります。そのため、例えば画面に"Hello,World"と表示するだけで、かなり複雑なプログラムを作る必要があります。

しかしながら、グラフィックLCDモジュール制御用のソフトウェアライブラリがフォントを内蔵している場合が多く、それらのライブラリを利用すれば、文字列からビットマップの変換作業はライブラリ内部で自動処理され、簡単に文字列の表示ができます。

例えばMGLCDライブラリを利用する場合は、次の様にするだけで、"Hello, World!"を表示できます。

MGLCD.print("Hello, World!");

たいていのグラフィックLCDモジュールは、表示内容を記憶するRAM(フレームバッファ)を1バイト単位で書き換える機能しか提供しておらず、例えば直線を描画する場合でも、その直線を構成する全ての画素の座標を、LCDを制御するマイコン側が計算する必要があります。

しかしながら、グラフィックLCDモジュール制御用のソフトウェアライブラリを使うと、その様な低レベルの処理はライブラリ側が処理してくれます。通常は直線の始点と終点の座標と直線の色を指定するだけで、直線が描画できます。

COB型LCDモジュールとCOG型LCDモジュール

液晶パネルとその駆動回路などを集積して一つの部品とした液晶モジュールは、それらの集積の方法によりCOB(Chip On Board)型のLCDモジュールとCOG (Chip On Glass)型のLCDモジュールに分類できます。

COB型のLCDモジュールは、液晶パネルとその駆動回路などを、プリント基板上に実装したタイプのLCDモジュールです。COG型のLCDモジュールと比較すると厚みがあり、小型の装置に組み込むにはあまり向きません。また、コスト的にもCOB型の液晶モジュールよりも高価になる傾向にあります。

一方で、通常はピンヘッダやピンソケットを使って基板に実装できるようにできているので、趣味の電子工作に使うには、はんだ付けがしやすい点で向いているという利点があります。

COG型のLCDモジュールは、液晶パネルのガラス基板上に、駆動回路なども実装したタイプのLCDモジュールです。プリント基板を使わない分だけ薄型になり、また低コストに作る事が出来ます。

一方で、通常はPFC(フレキケーブル)で基板と接続する様になっており、基板へのはんだ付けが難しかったり、専用のコネクタが高価で手に入りにくかったりするため、趣味の電子工作には使いにくい面があります。

LCDモジュールに供給される電源の電圧は通常3~5V程度ですが、液晶パネルを動作させるには十数V程度の電圧が必要になります。そのためLCDモジュール内には、通常、チャージポンプ回路と呼ばれる昇圧回路が内蔵されています。チャージポンプ回路は、比較的大容量(1μF程度)のコンデンサを数個使いますが、この様な大容量のコンデンサはガラス基板上に集積できないため、COG型のLCDモジュールでは外付け部品となってしまいます。そのため、COG型の方がCOB型よりも外付け部品が多くなる傾向にあります。

COB型とCOG型の違いをまとめた表を、次に示します。

COB型 COG型
大きさ 大きい(特に厚みがある) 小さい(特に厚みが少ない)
価格 高い 安い
手はんだのしやすさ しやすい しにくい
外付け部品の数 少ない 多い
写真5、COB型(左)とCOG型(右)のLCDモジュール
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写真5、COB型(左)とCOG型(右)のLCDモジュール

表示領域のサイズがおおむね同じTG12864E-01XWBV(左、COB型)とGH12864-20(右、COG型)を比較しました。

両方とも128×64ピクセルのバックライト付きグラフィックLCDモジュールです。また、右のGH12864-20は、写真2のシールドに使われているLCDモジュールです。

COB型のTG12864E-01XWBVには、液晶パネルの裏側に緑色のプリント基板があるのが分かります。このプリント基板に液晶パネルの駆動回路などが実装されています。

COG型のGH12864-20には、表示部の下側に、黒い帯(QCのシールが貼っているあたり)が見えますが、この部分に駆動回路などが実装されています。黒い封止材で回路をコーティングしているため、この部分が黒く見えています。

TG12864E-01XWBVは、2mmピッチのピンヘッダがはんだ付けできるようになっていますが、GH12864-20は0.5mmピッチのFPCが付いており、基板に実装するには、専用のソケットが必要です。

写真6、COB型(左)とCOG型(右)の厚みの比較
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写真6、COB型(左)とCOG型(右)の厚みの比較
COB型の方が、COG型よりも厚みがあるのが分かります。
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