「基本論理ゲート」の解説(2)

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2022年05月30日 更新

前のページに続き、基本論理ゲートの説明をします。

4.NAND回路(NANDゲート、否定論理積回路)

NAND回路とは、2入力1出力の論理回路で、2つの入力電圧が共にHの時だけ出力電圧がLになり、2つの入力電圧の内1つでもLの場合は出力電圧がHになる物を指します。NAND回路は、NANDゲートまたは否定論理積回路とも呼ばれます。

NAND回路の回路記号を図15に、真理値表を表6に、ベン図を図16に示します。

図15、NAND回路の回路記号
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図15、NAND回路の回路記号
表6、NAND回路の真理値表
入力電圧 出力電圧
A B Y
L L H
L H H
H L H
H H L
図16、NAND回路のベン図
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図16、NAND回路のベン図

NAND回路の出力電圧は、AND回路の出力電圧を論理反転した物なので、AND回路の出力をNOT回路に入力する事により、NAND回路の等価回路を構成する事ができます。(図17参照)

図17、1つのAND回路と1つのNOT回路で構成したNAND回路の等価回路
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図17、1つのAND回路と1つのNOT回路で構成したNAND回路の等価回路

またNAND回路は、3つ以上の入力に拡張する事ができます。

3つ以上の入力にNAND回路を拡張する場合は、「全ての入力電圧がHの場合だけ出力電圧がLになり、入力電圧の内1つでもLの場合は出力信号がHになる」様に動作を定義します。(2入力のNAND回路の動作も、この定義に従っています)

3入力のNAND回路の回路記号を図18に、真理値表を表7に、ベン図を図19に示します。

図18、3入力のNAND回路の回路記号
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図18、3入力のNAND回路の回路記号
表7、3入力のNAND回路の真理値表
入力電圧 出力電圧
A B C Y
L L L H
L L H H
L H L H
L H H H
H L L H
H L H H
H H L H
H H H L
図19、3入力のNAND回路のベン図
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図19、3入力のNAND回路のベン図

N入力(Nは自然数)のNAND回路の等価回路は、N入力AND回路の出力をNOT回路に入力する事により構成できます。N=3の場合として、3入力のNAND回路の等価回路を、1つの3入力AND回路と1つのNOT回路を用いて構成した例を図20の中段の回路図に示します。

図20、3入力NAND回路の等価回路
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図20、3入力NAND回路の等価回路

さらに、3入力AND回路の等価回路は、2つの2入力AND回路で構成できますから(図7参照)、3入力NAND回路の等価回路は、2つの2入力AND回路と1つのNOT回路でも構成できます。(図20の下段の回路図参照)

話を一般化すると、N入力NAND回路の等価回路は、N−1個の2入力AND回路と1つのNOT回路で構成できます。

NAND回路の入力端子の数が非常に多い場合は、AND回路と同様、図21の様に表記します。

図21、6入力NAND回路の回路記号
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図21、6入力NAND回路の回路記号

NAND回路の持つ「全ての入力電圧がHの場合にだけ出力電圧がLになり、入力電圧の内1つでもLの場合は出力電圧がHになる」という作用や、NAND回路で論理演算した結果(NAND回路の出力信号)は、否定論理積と呼ばれます。例えば「Yは、ABの否定論理積である」とか、「ABの否定論理積を取ればYが得られる」という具合に使われます。

論理式において、否定論理積を表す演算子はありませんので、論理積を表す · の演算子と論理否定を表す上線を組み合わせて否定論理積を表現します。

図15の2入力NAND回路の動作を表す論理式は、式(7)になります。

Y = A·B = AB ··· (7)

図18の3入力NAND回路の動作を表す論理式は、式(8)になります。

Y = A·B·C = = ABC ··· (8)

5.NOR回路(NORゲート、否定論理和回路)

NOR回路とは、2入力1出力の論理回路で、2つの入力電圧の内1つでもHの場合には出力電圧がLになり、2つの入力電圧が共にLになる場合だけ出力電圧がHになる物を指します。NOR回路は、NORゲートまたは否定論理和回路とも呼ばれます。

NOR回路の回路記号を図22に、真理値表を表8に、ベン図を図23に示します。

図22、NOR回路の回路記号
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図22、NOR回路の回路記号
表8、NOR回路の真理値表
入力電圧 出力電圧
A B Y
L L H
L H L
H L L
H H L
図23、NOR回路のベン図
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図23、NOR回路のベン図

NOR回路の出力電圧は、OR回路の出力電圧を論理反転した物なので、OR回路の出力をNOT回路に入力する事により、NOR回路の等価回路を構成する事ができます。(図24参照)

図24、1つのOR回路と1つのNOT回路で構成したNOR回路の等価回路
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図24、1つのOR回路と1つのNOT回路で構成したNOR回路の等価回路

またNOR回路は、3つ以上の入力に拡張する事ができます。

3つ以上の入力にNOR回路を拡張する場合は、「入力電圧の内1つでもHの場合は出力電圧がLになり、全ての入力電圧がLの場合だけ出力信号がHになる」様に動作を定義します。(2入力のNOR回路の動作も、この定義に従っています)

3入力のNOR回路の回路記号を図25に、真理値表を表9に、ベン図を図26に示します。

図25、3入力のNOR回路の回路記号
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図25、3入力のNOR回路の回路記号
表9、3入力のNOR回路の真理値表
入力電圧 出力電圧
A B C Y
L L L H
L L H L
L H L L
L H H L
H L L L
H L H L
H H L L
H H H L
図26、3入力のNOR回路のベン図
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図26、3入力のNOR回路のベン図

N入力(Nは自然数)のNOR回路の等価回路は、N入力OR回路の出力をNOT回路に入力する事により構成できます。N=3の場合として、3入力のNAND回路の等価回路を、1つの3入力AND回路と1つのNOT回路を用いて構成した例を図27の中段の回路図に示します。

図27、3入力NOR回路の等価回路
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図27、3入力NOR回路の等価回路

さらに、3入力OR回路の等価回路は、2つの2入力OR回路で構成できますから(図13参照)、3入力NOR回路の等価回路は、2つの2入力OR回路と1つのNOT回路でも構成できます。(図27の下段の回路図参照)

話を一般化すると、N入力NOR回路の等価回路は、N−1個の2入力OR回路と1つのNOT回路で構成できます。

NOR回路の入力端子の数が非常に多い場合は、OR回路と同様、図28の様に表記します。

図28、6入力NOR回路の等価回路
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図28、6入力NOR回路の等価回路

NOR回路の持つ「入力電圧の内1つでもHの場合には出力電圧がLになり、全ての入力電圧がLの場合にだけ出力電圧がHになる」という作用や、NOR回路で論理演算した結果(NOR回路の出力信号)は、否定論理和と呼ばれます。例えば「Yは、ABの否定論理和である」とか、「ABの否定論理和を取ればYが得られる」という具合に使われます。

論理式において、否定論理和を表す演算子はありませんので、論理和を表す + の演算子と論理否定を表す上線を組み合わせて否定論理和を表現します。

図22の2入力NOR回路の動作を表す論理式は、式(9)になります。

Y = A+B ··· (9)

また、図25の3入力NOR回路の動作を表す論理式は、式(10)になります。

Y = A+B+C ··· (10)

6.XOR回路(XORゲート、ExOR回路、ExORゲート、排他的論理和回路、不一致回路)

XOR回路とは、2入力1出力の論理回路で、2つの入力電圧の内1つだけがHの場合には出力電圧がHになり、入力電圧の中でHの数が0個または2つの場合には出力電圧がLになる物を指します。XOR回路は、XORゲートExOR回路ExORゲート排他的論理和回路、または不一致回路とも呼ばれます。

論理和回路(OR回路)は2つの入力電圧の内どちらか1つでもHの場合には出力電圧がHになり、2つの入力電圧が共にLになる場合だけ出力電圧がLになる論理回路でした。XOR回路の場合は、2つの入力電圧が共にHの場合に出力電圧をLとする所が論理和回路と異なる(他の入力電圧の場合は論理和回路と同じ出力電圧になる)事から、「排他的」論理和回路と呼ばれます。

排他的論理和回路がXOR回路やExOR回路と呼ばれるのは、排他的論理和を英訳するとexclusive orになる事に由来しています。

また、不一致回路と呼ばれるのは、2つの入力電圧が異なる時に出力電圧がH、2つの入力電圧が同じ時に出力電圧がLになるからです。

XOR回路の回路記号を図29に、真理値表を表10に、ベン図を図30に示します。

図29、XOR回路の回路記号
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図29、XOR回路の回路記号
表10、NOR回路の真理値表
入力電圧 出力電圧
A B Y
L L L
L H H
H L H
H H L
図30、XOR回路のベン図
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図30、XOR回路のベン図

XOR回路の等価回路は、NOT回路、AND回路およびOR回路の組み合わせで構成する事ができます。色々な等価回路がありますが、図31に、等価回路を2例示します。

図31、NOT回路、AND回路、およびOR回路で構成したXOR回路の等価回路
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図31、NOT回路、AND回路、およびOR回路で構成したXOR回路の等価回路

参考:図31の中段および下段の回路がXOR回路の等価回路になっている事を確認するには、それぞれの回路において、A=LかつB=LA=LかつB=HA=HかつB=L、およびA=HかつB=Hの4通りの入力電圧の組み合わせを考え、それぞれの組み合わせについてYを求めて、その結果得られた真理値表が表10と一致するのを確認します。

XOR回路の持つ「2つの入力電圧の内1つだけがHの場合には出力電圧がHになり、入力電圧の中でHの数が0個または2つの場合には出力電圧がLになる」という作用や、XOR回路で論理演算した結果(XOR回路の出力信号)は、排他的論理和と呼ばれます。例えば「Yは、ABの排他的論理和である」とか、「ABの排他的論理和を取ればYが得られる」という具合に使われます。

論理式において、排他的論理和は ⊕ の2項演算子を用いて表します。

図29のXOR回路の動作を表す論理式は、式(11)になります。

Y = AB ··· (11)

また、図31の中央の等価回路より、式(11)の論理式は式(12)の様にも書けます。

Y = A·B+A·B ··· (12)

注:論理積の演算子(·)は、論理和の演算子(+)よりも優先順位が高く、先に計算します。よって、A·B+A·Bは、(A·B)+(A·B)と解釈します。

XOR回路の詳しい話は、この用語集のXOR回路のページでご覧ください。

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