2022年05月30日 | 更新 |
基本論理ゲートとは、低い電圧(L)と高い電圧(H)の2種類の信号電圧しか扱わない2値論理回路(以下、単に「論理回路」と言います)の中で、特に基本的な、2入力または1入力で1出力の物を指します。一般的には、NOT回路、AND回路、OR回路、NAND回路、NOR回路、XOR回路の6種類が、基本論理ゲートと呼ばれる事が多いです。またNAND回路、NOR回路、およびXOR回路は、NOT回路、AND回路およびOR回路の組み合わせで構成できるため、NOT回路、AND回路およびOR回路の3つを基本論理ゲートと呼ぶ場合もあります。基本論理ゲートは、単に基本ゲートと呼ばれる事もあり、基本論理回路と呼ばれる事もあります。
後述する様に、AND回路、OR回路、NAND回路、およびNOR回路は、自然な形で3入力以上に拡張できます。これらの多入力のAND回路、OR回路、NAND回路、およびNOR回路も、基本論理ゲートに含める場合があります。
NOT回路とは、1入力1出力の論理回路で、入力電圧の反対の電圧を出力する物を指します。つまり、入力電圧をA、出力電圧をYとすると、A=Lの時はY=Hとなり、A=Hの時はY=Lとなります。NOT回路は、NOTゲート、論理反転回路、論理否定回路、あるいはインバータとも呼ばれます。
NOT回路の回路記号を図1に、真理値表を表1に、ベン図を図2に示します。
入力電圧 | 出力電圧 |
---|---|
A | Y |
L | H |
H | L |
NOT回路の持つ「入力電圧と反対の電圧を出力する」という作用や、NOT回路で論理演算した結果(NOT回路の出力信号)は、論理反転あるいは論理否定と呼ばれます。例えば、「YはAの論理反転(論理否定)である」とか「Aを論理否定(論理反転)するとYが得られる」という具合に使います。
論理式において、Aの論理式は、上線を用いてAと表記します。図1のNOT回路の動作を示す論理式は、式(1)になります。
NOT回路の詳しい話は、この用語集のNOT回路のページでご覧ください。
AND回路とは、2入力1出力の論理回路で、2つの入力電圧が共にHの時だけ出力電圧がHになり、2つの入力電圧の内1つでもLの場合は出力電圧がLになる物を指します。AND回路は、ANDゲートまたは論理積回路とも呼ばれます。
AND回路の回路記号を図3に、真理値表を表2に、ベン図を図4に示します。
入力電圧 | 出力電圧 | |
---|---|---|
A | B | Y |
L | L | L |
L | H | L |
H | L | L |
H | H | H |
またAND回路は、3つ以上の入力に拡張する事ができます。
3つ以上の入力にAND回路を拡張する場合は、「全ての入力電圧がHの場合にだけ出力電圧がHになり、入力電圧の内1つでもLの場合は出力電圧がLになる」様に動作を定義します。(2入力のAND回路の動作も、この定義に従っています)
3入力のAND回路の回路記号を図5に、真理値表を表3に、ベン図を図6に示します。
入力電圧 | 出力電圧 | ||
---|---|---|---|
A | B | C | Y |
L | L | L | L |
L | L | H | L |
L | H | L | L |
L | H | H | L |
H | L | L | L |
H | L | H | L |
H | H | L | L |
H | H | H | H |
3入力のAND回路は、2入力のAND回路を2個使って等価回路を作る事ができます。その等価回路を図7に示します。
また一般に、N入力(Nは自然数)のAND回路は、N−1個の2入力のAND回路により等価回路を作る事ができます。
AND回路の入力端子の数が非常に多い場合は、AND回路の回路記号の入力端子が接続される直線を、図8に示す様に延長します。
AND回路の持つ「全ての入力電圧がHの場合にだけ出力電圧がHになり、入力電圧の内1つでもLの場合は出力電圧がLになる」という作用や、AND回路で論理演算した結果(AND回路の出力信号)は、論理積と呼ばれます。例えば「Yは、AとBの論理積である」とか、「AとBの論理積を取ればYが得られる」という具合に使われます。
論理式において、論理積は · という2項演算子を用いて表します。
図3の2入力AND回路の動作を表す論理式は、式(2)になります。
論理積を表す · の演算子は、省略される事もあります。演算子の省略を使って式(2)を表すと、式(3)になります。
また、図5の3入力AND回路の動作を表す論理式は、式(4)になります。
AND回路の詳しい話は、この用語集のAND回路のページでご覧ください。
OR回路とは、2入力1出力の論理回路で、2つの入力電圧の内1つでもHの場合には出力電圧がHになり、2つの入力電圧が共にLになる場合だけ出力電圧がLになる物を指します。OR回路は、ORゲートまたは論理和回路とも呼ばれます。
OR回路の回路記号を図9に、真理値表を表4に、ベン図を図10に示します。
入力電圧 | 出力電圧 | |
---|---|---|
A | B | Y |
L | L | L |
L | H | H |
H | L | H |
H | H | H |
またOR回路は、3つ以上の入力に拡張する事ができます。
3つ以上の入力にOR回路を拡張する場合は、「入力電圧の内1つでもHの場合には出力電圧がHになり、全ての入力電圧がLの場合にだけ出力電圧がLになる」様に動作を定義します。(2入力のOR回路の動作も、この定義に従っています)
3入力のOR回路の回路記号を図11に、真理値表を表5に、ベン図を図12に示します。
入力電圧 | 出力電圧 | ||
---|---|---|---|
A | B | C | Y |
L | L | L | L |
L | L | H | H |
L | H | L | H |
L | H | H | H |
H | L | L | H |
H | L | H | H |
H | H | L | H |
H | H | H | H |
3入力のOR回路は、2入力のOR回路を2個使って等価回路を作る事ができます。その等価回路を図13に示します。
また一般に、N入力(Nは自然数)のOR回路は、N-1個の2入力のOR回路により等価回路を作る事ができます。
OR回路の入力端子の数が非常に多い場合は、OR回路の回路記号の入力端子が接続される曲線を、図14に示す様に延長します。
OR回路の持つ「入力電圧の内1つでもHの場合には出力電圧がHになり、全ての入力電圧がLの場合にだけ出力電圧がLになる」という作用や、OR回路で論理演算した結果(OR回路の出力信号)は、論理和と呼ばれます。例えば「Yは、AとBの論理和である」とか、「AとBの論理和を取ればYが得られる」という具合に使われます。
論理式において、論理和は + という2項演算子を用いて表します。
図9の2入力AND回路の動作を表す論理式は、式(5)になります。
また、図11の3入力OR回路の動作を表す論理式は、式(6)になります。
OR回路の詳しい話は、この用語集のOR回路のページでご覧ください。
次のページでは、NAND回路、NOR回路、XOR回路について説明します。