「NOT回路」の解説(2)

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2019年11月27日 更新

5.論理圧縮に使えるNOT回路の性質

論理回路を論理圧縮する場合に利用できる、NOT回路の性質をいくつか説明します。

注:論理圧縮とは、元の回路と等価な論理回路を、なるべく少ない基本論理ゲートを用いて求める事を指します。

5-1.必ずLが入力されるNOT回路

図12に示す様に、必ずLが入力されるNOT回路の出力は、必ずHになります。

図12、必ずLが入力されるNOT回路
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図12、必ずLが入力されるNOT回路

5-2.必ずHが入力されるNOT回路

図13に示す様に、必ずHが入力されるNOT回路の出力は、必ずLになります。

図13、必ずHが入力されるNOT回路
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図13、必ずHが入力されるNOT回路

5-3.偶数個のNOT回路を縦続に接続した場合の等価回路

図14に示す様に、2つのNOT回路を縦続に接続した場合に、A点、B点、C点の電圧の関係を真理値表にすると表10の様になります。

図14、2つのNOT回路を縦続に接続した回路
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図14、2つのNOT回路を縦続に接続した回路
表10、図14の回路の真理値表
入力電圧 中間電圧 出力電圧
A B C
L H L
H L H

表10より、入力電圧Aと出力電圧Cは、同じ電圧になる事が分かります。

この事は、図14に示した2つのNOT回路を縦続接続した回路が、図15に示すバッファ回路と等価である事を示しています。

図15、図14の回路に等価なバッファ回路
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図15、図14の回路に等価なバッファ回路

ここでバッファ回路は、表11の真理値表に示す様に、入力電圧と同じ電圧を出力する回路の事です。

表11、図15のバッファ回路の真理値表
入力電圧 出力電圧
A C
L L
H H

バッファ回路は、場合によってはA点とC点を結ぶ、ただの配線(図16参照)だと説明される事がありますが、バッファ回路とただの配線とは少し違います。

図16、端子Aと端子Cを結ぶ配線
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図16、端子Aと端子Cを結ぶ配線

図15のバッファ回路の場合、A点は必ず入力端子で、C点は必ず出力端子です。よって、図17の様に、C点にNOT回路(U3)の出力を接続したり、A点にNOT回路(U1)の入力端子を接続したりする事ができません。

図17、バッファ回路はC点からA点に信号を伝えられない
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図17、バッファ回路はC点からA点に信号を伝えられない

一方で、ただの配線なら、図18の様にC点にNOT回路(U2)の出力を接続し、A点にNOT回路(U1)の入力端子を接続し、C点からA点に信号を伝えられます。

図18、ただの配線ならC点からA点に信号を伝えられる
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図18、ただの配線ならC点からA点に信号を伝えられる

他にも、バッファ回路には、ただの配線にはない、電流増幅作用や波形整形作用があります。

次に、図19の上側の回路の様に、NOT回路を偶数個縦続接続した場合を考えます。

図19、偶数個のNOT回路を縦続に接続した回路の等価回路
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図19、偶数個のNOT回路を縦続に接続した回路の等価回路

NOT回路を2つ縦続接続した場合と同様の考察により、この回路が、図19の下側に示した様に、1つのバッファ回路と等価になる事が分かります。

5-4.奇数個のNOT回路を縦続に接続した場合の等価回路

図20の様に、3つのNOT回路を縦続に接続した場合を考えます。

図20、3つのNOT回路を縦続に接続した回路
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図20、3つのNOT回路を縦続に接続した回路

A点~D点の電圧の関係を真理値表にすると、表12の様になります。

表12、図13の回路の真理値表
入力電圧 中間電圧 出力電圧
A B C D
L H L H
H L H L

この真理値表から分かる様に、入力電圧AがLの時は出力電圧DがHになり、入力電圧AがHの時は出力電圧DがLになります。

この事は、NOT回路を3つ縦続に接続した回路は、図21の様な、1つのNOT回路と等価である事を示しています。

図21、図20の回路に等価な回路
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図21、図20の回路に等価な回路

次に、図22の上側の回路の様に、NOT回路を奇数個縦続接続した場合を考えます。

図22、奇数個のNOT回路を縦続に接続した回路の等価回路
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図22、奇数個のNOT回路を縦続に接続した回路の等価回路

NOT回路を3つ縦続接続した場合と同様の考察により、この回路が図22の下側に示した様に、1つのNOT回路と等価になる事が分かります。

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6.NOT回路の性質を利用した論理圧縮の実例

それでは、前章で説明したNOT回路の性質を利用して、論理圧縮をしてみましょう。2つの例題の回路をあげ、実際に論理圧縮してみます。

6-1.準備(OR回路の性質の確認)

NOT回路の性質を利用しただけでは、複雑な回路を論理圧縮できませんから、次に示す、OR回路の性質も利用する事にします。

図23の様に、一方の入力にHが入力されたOR回路は、必ずHを出力します。

図23、一方の入力にHが入力されたOR回路
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図23、一方の入力にHが入力されたOR回路
OR回路の一方の入力がHだと、もう一方の入力Aの値にかかわらず、出力Bの電圧はHになります。

また、図24の左側の回路の様に、一方の入力にLが入力されたOR回路の出力には、もう一方の入力のAがそのまま出力されます。つまりこの回路は、図24の右側の回路の様に、バッファ回路と等価になります。

図24、一方の入力にLが入力されたOR回路
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図24、一方の入力にLが入力されたOR回路
OR回路の一方の入力にLが入力されていると、出力BにはAの電圧が出力されます。つまり、このOR回路は、Aを入力してBを出力するバッファ回路と等価です。

参考:OR回路の持つ図23や図24の性質は、OR回路の真理値表から簡単に証明できます。是非自分でこれらの性質を証明してみましょう。

6-2.例題1

それでは、例題1として、図25の回路を論理圧縮してみましょう。

図25、例題1で論理圧縮する回路
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図25、例題1で論理圧縮する回路

この回路にはNOT回路が5個、OR回路が3個ありますが、これら8個の基本ゲートに、U1~U8の部品番号を付けてあります。

この回路の入力は2つありますが、一方の電圧はHに固定されています。もう一方の入力にはAという信号名を付けています。

この回路の出力は1個で、Cという信号名を付けています。

今U2に注目すると、入力電圧が必ずHですから、図13に示したNOT回路の性質により、出力電圧はLになるはずです。この事により、U2を回路図より省く事ができます。実際にU2を省いた回路図を図26に示します。

図26、図25の回路からU2を省いた回路
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図26、図25の回路からU2を省いた回路

ここでU4に注目すると、OR回路の一方の入力にHが入力されていますから、図23に示したOR回路の性質により、U4の出力は必ずHになります。

またU5に注目すると、OR回路の一方の入力にLが入力されていますから、図24に示したOR回路の性質により、U5は、U3の出力とU7の入力をつなぐ配線に置き換えられます。

注:図26の回路では、信号がU3の出力端子からU7の入力端子に向けて伝わるので、U3の出力信号を入力したバッファ回路の出力をU7の入力端子に接続する事は、U3の出力端子とU7の入力端子を配線でつなぐ事と同じである事に注意してください。

これらの理由により、図26の回路からU4とU5を省くと図27の様な回路になります。

図27、図26の回路からU4とU5を省いた回路
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図27、図26の回路からU4とU5を省いた回路

ここでU6に注目すると、入力電圧が必ずHなので、図13に示したNOT回路の性質により、U6の出力電圧は必ずLになります。

またU1、U3、U7の3つのNOT回路について注目すると、3つのNOT回路が縦続に接続されているため、図22に示したNOT回路の性質により、これら3つのNOT回路は1つのNOT回路に置き換えられます。今、U1とU3を省いてU7を残す事にします。

これらの理由により、図27の回路からU1、U3、U6の3つのNOT回路を省くと、図28の回路になります。

図28、図27の回路からU1、U3、U6の3つのNOT回路を省いた回路
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図28、図27の回路からU1、U3、U6の3つのNOT回路を省いた回路

ここでU8に注目すると、図24に示したOR回路の性質により、U8は、U7の出力とCを結ぶ配線に置き換えられる事が分かります。

図28の回路からU8を省くと、最終的に図29の様に、NOT回路が一つだけの回路が得られます。

図29、最終的に得られた図25の回路の論理圧縮の結果
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図29、最終的に得られた図25の回路の論理圧縮の結果
この回路は、図28の回路からU8を省く事により得られます。

6-3.例題2

例題2として、図30の様な回路を論理圧縮してみます。この回路は、例題1で論理圧縮した図25の回路で、Hを入力していた左上の端子に、今度は逆にLを入力した回路となっています。

図30、例題2で論理圧縮する回路
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図30、例題2で論理圧縮する回路
この回路と、例題1で論理圧縮した図25の回路とは、左上の端子にLを入力するかHを入力するかの違いを除けば、同じ回路です。

今U2に注目すると、図12に示したNOT回路の性質により、U2の出力電圧が必ずHになる事が分かります。

この理由により、図30の回路からU2を省くと、図31の回路になります。

図31、図30の回路からU2を省いた回路
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図31、図30の回路からU2を省いた回路

ここでU4に注目すると、図24に示したOR回路の性質により、U4を取り除いて、U1の出力を直接U6に入力しても、動作が変わらない事が分かります。

またU5に注目すると、図23に示したOR回路の性質により、U5の出力電圧が必ずHになる事が分かります。この事により、U5が回路から省けます。さらに、U3の出力電圧はU5の出力電圧に影響しないため、U3も回路から省けます。

これらの理由により、U3、U4、U5の3つを図31の回路図から省くと、図32の回路になります。

図32、図31の回路からU3、U4、U5の3つを省いた回路
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図32、図31の回路からU3、U4、U5の3つを省いた回路

ここでU1とU6に注目すると、図19に示したNOT回路の性質により、これら2つのNOT回路を回路から省き、AをU8の上側の入力端子に直接入力しても、回路の動作が変わらない事が分かります。

またU7に注目すると、図13に示したNOT回路の性質により、U7の出力電圧が必ずLになる事が分かります。

これらの理由により、図32の回路からU1、U6、U7の3つを省くと、図33の回路になります。

図33、図32の回路からU1、U6、U7の3つを省いた回路
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図33、図32の回路からU1、U6、U7の3つを省いた回路

ここでU8に注目すると、図24に示したOR回路の性質により、U8は、Aを入力とし、Cを出力とするバッファ回路に置き換えられる事が分かります。

この置き換え操作により、最終的に図34の様な回路が得られます。

図34、最終的に得られた図30の回路の論理圧縮の結果
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図34、最終的に得られた図30の回路の論理圧縮の結果
この回路は、図33の回路のU8を、バッファ回路に置き換えると得られます。

6-4.例題1と例題2の補足

図25(あるいは図30)の回路の左上の入力端子の電圧を、H(図25の場合)やL(図30の場合)に固定せずに、Bという信号名の信号にした、図35の様な回路について考えてみます。

図35、この節で考察する回路
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図35、この節で考察する回路

例題1により、Bの電圧がHの場合には、出力CはAになる事が分かっています。

また例題2により、Bの電圧がLの場合には、出力CはAになる事が分かっています。

これらの事から、図35の回路の真理値表を作成すると、次の様になります。

表13、図33の回路の真理値表
入力信号 出力信号
備考
A
B
C
L L L C=A
L H H C=A
H L H C=A
H H L C=A

この真理値表を見ると、図35の回路は、図36に示すXOR回路と等価である事が分かります。

図36、図35の回路の等価回路
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図36、図35の回路の等価回路

次のページでは、バイポーラトランジスタを用いたNOT回路の構成法と、NOT回路を使った記憶素子について説明します。

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