2020年05月21日 | 公開。 |
この節では、図5のNOT回路を作るにあたって、リレーを使う上で注意しなければならない事について説明します。
図5の回路図では、図9に示す1回路のリレーを使っています。
一方で、今回使う941H-2C-5Dというリレーは、図10に示す2回路のリレーです。
ここで、リレーにおける「1回路」や「2回路」というのは、リレー内部にあるスイッチが1個か2個かという事を表しています。
2回路以上のリレーにおいては、コイルに電圧が掛かっていない時は、内蔵している全てのスイッチにおいてCOM端子とNC端子が導通しており、NO端子はCOM端子やNC端子と絶縁されています。
また、コイルに規定の電圧がかかっている場合は、内蔵している全てのスイッチにおいて、COM端子とNO端子が導通しており、NC端子はCOM端子やNO端子と絶縁されています。
この様に、2回路以上のリレーでは、コイルに電圧が掛かるかどうかで、内蔵している全てのスイッチが一斉に切り替わります。
NOT回路(や後述するAND回路やOR回路)を作るには、1回路のリレーがあれば十分なのですが、2回路のリレーの方が用途が多いため、今回は1回路のリレーを購入しました。
参考:どうしても1回路のリレーを使いたい場合は、秋月電子で売っているY14H-1C-5DSを購入してください。
今回使う941H-2C-5Dというリレーは、写真4と写真5に示す様に、8つのピン(電極)があり、それぞれのピンに、1番ピン、4番ピン、6番ピン、8番ピン、9番ピン、11番ピン、13番ピン、および16番ピンと、ピン番号が振られています。
そして、941H-2C-5Dの標準的なピン割り当ては、図11の様になります。
ここで、リレーの中のコイルには(発生する磁界の向きを気にしないならば)極性がない事に注意しましょう。すなわち、コイルのどちら側のピンを+側にしても、既定の直流電圧を掛ければ磁界が発生し、スイッチを切り替えます。コイルの両端の1番ピンと16番ピンを入れ替えても、リレーの動作は変わらないのです。
つまり、図12の様にピン割り当てを変えても、リレーの動作が変わりません。
さらに、コイルに掛ける入力電圧により、リレーの中の2つのスイッチが同時に切り替わるため、これら2つのスイッチは、電気的には区別できません。(配置は異なります) よって、4番ピン、6番ピン、および8番ピンに接続されているスイッチと、13番ピン、11番ピン、および9番ピンに接続されているスイッチとを入れ替えて、図13の様なピン割り当てに変えても、リレーの電気的な振舞いは変わりません。
さて、NOT回路を組み立てるのに、実際には2回路のリレーは不要で、1回路のリレーで十分です。2回路のリレーで1回路のリレーの代用をしようとすると、内蔵している2つのスイッチの内1つは、使わずに置いておく事になります。
この際に、コイルの2つのピンのどちら側を+側にするかと、どちらのスイッチを使うかで、図14~図17に示す、4通りの選択肢があります。
コイルに電圧を掛ける際に+4.5V電源につなぐ側のピンを「+側」、GNDにつなぐ側のピンを「−側」と表記しています。
ピンに付いている×印は、そのピンが、電気的にどこにも接続されていない事を示します。(接続しないピンに×印を付けないと間違いという訳ではありませんが、スイッチを使用しない事を強調するために×印を描いています)
(a)では使用しない側のスイッチも省略せず表記する方法を示していますが、(b)では使用しない側のスイッチを省略し、あたかも1回路のリレーの様に表記する方法を示しています。
この図の場合、1番ピンを+側にし、かつ、4番ピン、6番ピン、および8番ピンに接続されたスイッチの方を使用します。
この図の場合、16番ピンを+側にし、かつ、4番ピン、6番ピン、および8番ピンに接続されたスイッチの方を使用します。
これらの4種類のピン割り当ての内、どれを選んでもNOT回路は動作しますが、どれを選ぶかで配線の複雑さが変わってきます。実体配線図を描く際に、大まかな部品配置をまず考え、次にどのピン割り当てを選ぶと配線が楽になるかを考えるといいでしょう。
筆者の場合、図8の実体配線図を考える過程で、図17のピン配置が便利だと判断しました。そう判断した時点で、図5の回路図に、図17通りのピン番号を描き込むと便利でしょう。(図18参照)
赤字で書き込んである数字が、リレーのピン番号です。この様にピン番号を回路図中に書き込んでおくと、回路図と実体配線図の対応が把握しやすくなります。
次のページでは、リレーのコイルで発生するサージ電圧について説明します。