しなぷすのハード製作記

Arduino創始者グループの分裂がユーザに与える影響について

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2016年08月04日 公開。

このサイトをご覧の方は既にご存知と思いますが、Arduinoの創始者のグループが分裂し、それぞれの経営する会社の間で訴訟になっています。この問題は色々なサイトで説明されていますが、この記事では、ユーザーがArduinoを使う際に、どの様に影響を受けるかに重点を置いて説明します。

目次

1. Arduino LLCとArduino SRL … 1ページ
2. ArduinoとGenuino … 1ページ
3. 両社が販売するArduinoの種類 … 1ページ
4. Arduino IDEのバージョンの問題 … 1ページ

1.Arduino LLCとArduino SRL

Massimo Banzi、David Cuartielles、Tom Igoe、David Mellis、Gianluca Martinoの5人がArduinoの創始者ですが、Massimo Banzi、David Cuartielles、Tom Igoe、David Mellisの4人が経営するArduinoLLC社と、Gianluca Martinoの経営するArduino SRL社が対立し、双方の間で商標などをめぐり、訴訟になっています。

対立が深刻化する前は、Arduinoの設計はアメリカArduino LLCが行っており、生産はArduino SRLが行っていましたが、現在は独立して企業活動を行っている模様です。現在Arduino LLCは、Adafruit社を製造面のパートナーにして活動しています。

スイッチサイエンス記事によると、Arduino LLC側は、「Arduino LLCがArduinoの商標を米国および全世界で商標登録しようとしたら、既にArduino SRLによってイタリアで商標登録されていた」とか、「Arduino SRLは実装業者にすぎない。それなのにライセンス料を払ってくれなくなった」などと主張しているようです。

またArduino SRL側は、「Arduino LLCが『Arduinoの製造権を希望者に無償提供する』といいだした。それは当社の多大な投資と努力を無にする」などと主張しているようです。

ここでは対立の詳細には触れませんが、詳しく知りたい人は、参考になるページへのリンクを下の関連ページの所に用意しておきましたので、そちらをご覧ください。

なお、ArduinoLLCのユーザーサポートページはarduino.ccで、Arduino SRLのユーザーサポートページはarduino.orgです。

2.ArduinoとGenuino

今回の対立により、Arduino LLCは、イタリアで"Arduino"の商標を使えなくなりました。そこで、Arduino LLCは、米国内で販売する製品については、従来通り"Arduino"の商標を使い、米国外に輸出する製品については、"Genuino(ジェニュイーノ)"の商標を使う方針にした様です。

そのため、例えば"Arduino Uno"と"Genuino Uno"という具合に、機能的には全く同じ製品でありながら、商品名(と基板に書いてあるロゴ)のみが異なる2つの製品ができる事になりました。これは、事情をよく知らない初心者には非常に紛らわしい事態です。

ArduinoとGenuinoの違いをまとめると、次の様になります。

後述する様にArduino Unoの場合はArduino LLCとArduino SRLの両社が販売していますから、機能的に同じながらも(1)Arduino LLCが米国内で販売するArduino Uno、(2)Arduino LLC社が米国外に輸出するGenuino Uno、(3)Arduino SRLが販売するArduino Unoの3種類ある事になります。もちろん、どの種類のArduino Unoが手元にあっても、ユーザーは区別する事なく使用できます。

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3.両社が販売するArduinoの種類

対立以前から製造していたArduinoの一部は、Arduino LLCとArduino SRLの両社が販売しています。具体的に言うと、Arduino Uno、Arduino Mega 2560、Ardino Microは、両社で扱っているようです。

一方で、Arduino LeonardoやArduino Dueはarduino.cc(Arduino LLC)の製品リストから消えました。Arduino SRLのみが販売しているようです。

逆に、Arduino ProやArduino Pro Miniは、arduino.org(Aduino SRL)の製品リストには載っていません。Arduino LLCのみが販売しているようです。

両社の対立後に開発された製品については当然、開発した会社のみが販売しています。

2016年8月現在において、両社が販売している製品を、両社のユーザーサポートページから抜き出してまとめたのが表1です。この表で、太字で表記したのが、両社が共に販売しているArduinoです。

表1、Arduino LLCとArduino SRLが販売するArduinoの種類
会社名
(サポートサイト)
販売するArduino
Arduino LLC
(arduino.cc)
Arduino Uno、Arduino 101、Arduino Pro、Arduino Pro Mini、Arduino MicroArduino Mega 2560、Arduino Zero、Arduino MKR1000、Arduino Gemma、LilyPad Arduino USB、LilyPad Arduino Main Board、LilyPad Ardino Simple、LilyPad Arduino SimpleSnap
Arduino SRL
(arduino.org)
Arduino Primo、Arduino Star - Otto、Arduino Uno Wifi、Arduino tian、Arduino Industrial 101、Arduino Yun、Arduino Uno、Arduino Yun Mini、Arduino Leonardo ETH、Arduino M0、Arduino M0 Pro、Arduino Mega 2560、Arduino Leonardo、Arduino Due、Arduino Micro、Arduino Ethernet、Arduino Robot、Arduino Nano、Arduino Mega ADK、Arduino Mini 05、Arduino Esplora

注:表1には、Arduino LLCあるいはArduino SRLのライセンス供与の元、他社が製造・販売している製品を含みます。

なお一時期、Arduino SRLがArduino Zero Proという製品を販売していましたが、Arduino M0という商品名に変わりました。これは、Arduino LLCがArduino Zeroという、Arduino Zero Proとほぼ同じ仕様の製品を販売していることから、商標上の問題が発生したのだと思われます。

4.Arduino IDEのバージョンの問題

Arduino IDEのバージョンの問題が、Arduino創始者グループの分裂の影響を、ユーザーが最も大きく受ける問題だと思います。

Arduino IDEには、大きく分けて、Arduino IDE 1.0.XArduino IDE 1.5.XArduino IDE 1.6.XArduino IDE 1.7.Xの4系統があります。(Xは任意の数字。これらの4種類以外にも、Arduino IDE 1.0.0がリリースされる前のβリリースがありますが、ここでは省略しました) これらの4系統のArduino IDEの違いをまとめたのが表2です。

表2、Arduino IDEの4系統のそれぞれの特徴
Arduin IDEの
バージョン
特徴
1.0.X 両社の対立前のArduino IDE。Arduino Uno、Arduino Pro、Arduino Mega 2560、Arduino Leonardoなど、8ビットのAVRマイコンを搭載したArduinoにしか対応していない。arduino.ccarduino.orgの双方でダウンロードすることができる。(現在ダウンロードできるのは一部のバージョンのみ)
1.5.X 8ビットAVRマイコン以外のマイコンを搭載したArduinoに対応するため、試験的に作られたβ版。arduino.ccarduino.orgの双方でダウンロードすることができる。(現在ダウンロードできるのは一部のバージョンのみ)
1.6.X arduino.ccが配布する最新のArduino IDE。両社の対立前に開発されたArduinoと、対立後にArduino LLCが開発したArduinoに対応している。
1.7.X arduino.orgが配布する最新のArduino IDE。両社の対立前に開発されたArduinoと、対立後にArduino SRLが開発したArduinoに対応している。

Arduino IDE 1.0.Xは、8ビットのArduinoの開発にしか使えませんし、arduino.ccarduino.orgもサポートの終了を明言していますので、これから徐々に使われなくなっていくと思います。

Arduino IDE 1.5.Xは、β版との位置づけですので、現在では、何か特殊な事情がないと、使う理由がありません。

Arduino IDE 1.6.Xは、arduino.ccのみが配布しているArduino IDEです。両社の対立前に開発されたArduinoと、Arduino LLCが独自に開発したArduinoに対応していますが、Arduino SRL社が独自に開発したArduinoには対応していません

Arduino IDE 1.7.Xは、arduino.orgのみが配布しているArduino IDEです。両社の対立前に開発されたArduinoと、Arduino SRLが独自に開発したArduinoに対応していますが、Arduino LLC社が独自に開発したArduinoには対応していません

Arduino UnoやArduino Mega 2560などの古い機種を使う場合は、どの系統のArduino IDEを使ってもいいのですが、新しい機種を使う場合は、その機種によりArduino IDEを使い分ける必要があります。

Mac環境の事はよく知りませんが、Windows環境の場合、インストーラでArduino IDEをインストールすると、元々インストールされていたArduino IDEはアンインストールされてしまいます。そのため、そのままは、Arduino LLCとArduino SRLの両方の新しい機種を持っているユーザーは、使う機種を変えるたびにArduino IDEをインストールしなおす羽目になってしまいます。この問題を回避するには、複数のバージョンのArduino IDEをインストールする方法で説明した方法により、対処する必要があります。

表3に、(1)Arduino IDE 1.6.XでもArduino IDE 1.7.Xでも開発できるArduino、(2)Arduino IDE 1.6.Xのみで開発できるArduino、(3)Arduino IDE 1.7.Xのみで開発できるArduinoをまとめて示します。(この表に載っているのは、代表的なArduinoのみです)

表3、各Arduinoの開発に必要なArduino IDEのバージョン
必要なArduino IDE
のバージョン
Arduinoの機種
1.6.Xまたは1.7.X Arduino Duemilanove、Arduino Diecimila、Arduino Uno、Arduino Nano、Arduino Mega、Arduino Mega 2560、Arduino Leonardo、Arduino Micro、Arduino Mini、Arduino Pro、Arduino Pro Mini、Arduino Due
1.6.Xのみ Arduino Zero、Arduino MKR1000、Arduino 101、Galileo、Edison
1.7.Xのみ Arduino M0、Arduino M0 Pro、Arduino Tian

この表からわかるように、8ビットのArduinoとArduino Dueについては、Arduino LLCとArduino SRLの一方しか販売していなくても(あるいは両社とも販売を中止していても)、両方のArduino IDEで開発ができます。現在では片方のArduino IDEでしか開発できない機種は多くはありませんが、今後増えていくものと考えられます。

Arduino IDE 1.6.XとArduino IDE 1.7.Xでは、搭載されている機能やメニュー構成に差がある事も、ユーザーの混乱を招く原因になっています。(図1と図2を参照) 現在は両社の差はあまり大きくないですが、今後かい離していかないかと心配しています。

図1、Arduino IDE 1.6.9でスケッチメニューを開いた様子
図1、Arduino IDE 1.6.9でスケッチメニューを開いた様子
図2、Arduino IDE 1.7.10でスケッチメニューを開いた様子
図2、Arduino IDE 1.7.10でスケッチメニューを開いた様子
図3、タスクバー上のArduino IDE 1.6.9のアイコン(左)とArduino IDE 1.6.10のアイコン(右)
図3、タスクバー上のArduino IDE 1.6.9のアイコン(左)とArduino IDE 1.6.10のアイコン(右)
細かい話ですが、Arduino IDE 1.6.XとArduino IDE 1.7.10とでは、Windows 10のタスクバーに表示されるアイコンが、微妙に違います。自作ライブラリの動作試験時に両方起動することの多い筆者にとっては、区別がつきやすくて助かっています。
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ISBN:978-4-7775-1941-5
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