2019年09月06日 | 更新。 |
命題(proposition)は論理学上の概念で、内容が正しいか正しくないかが確定している文の事を指します。命題が正しい事を真といい、命題が正しくない事を偽といいます。
命題は真であるか偽であるかのいずれかであるため、高い電圧(H)と低い電圧(L)の2つの電圧値しか使わない2値論理回路と相性が良く、論理式の真理値(真と偽のどちらであるか)の計算に2値論理回路がよく使われます。
参考:論理式は複数の命題を「かつ」、「または」、「ならば」、および「~でない」という言葉でつなげて作った命題(複合命題)を、式の形で表現したものです。
「内容が正しいか正しくないかが確定している文」という説明だけでは、命題のイメージがつかみにくいと思いますので、命題の例をあげます。
例えば「富士山は日本で一番高い山である」という文は正しいと判断できますので真の命題(正しい内容の文)です。
また数学的な例を挙げると、「xとyを実数とする時、(x+y)2=x2+2xy+y2が成立する」という文も真の命題です。
例えば「富士山より高い山が日本にある」という文は、正しくないと判断できますので、偽の命題(正しくない内容の文)です。
また数学的な例を挙げると、「xを実数とする時、x>x+1が成立する」という文も、偽の命題です。
例えば「富士山はとても高い山である」という文は命題ではありません。というのは、「とても高い」という言葉に主観が含まれるからです。100mの山でも「とても高い」と感じる人がいるかも知れないですし、「富士山より高い山が世界中に色々とあるので、富士山はとても高いとまでいえない」と思う人がいるかも知れないので、「富士山はとても高い山である」という文は、客観的に真偽を定める事ができません。
また、命令文や疑問文は命題ではありません。
例えば「行儀よくご飯を食べなさい」という命令文は、真偽がはっきり決まる事を述べている文ではありませんので命題ではありません。
また「ロンドンはイギリスの首都ですか?」という疑問文も同様に、真偽がはっきり決まる事を述べている文ではありませんので命題ではありません。(「ロンドンはイギリスの首都だ」という文なら真の命題です)
変数を含む文も、一般的には命題ではありません。例えば「xを実数として、x>5が成立する」という文は、変数xの値によって、x>5が成立するかどうかが変わってくるので、真偽が定められません。
注:「変数を含む文も一般的には命題ではありません」と、「一般的には」という言葉を付けて説明したのは、変数を含む文でも、内容によっては命題になる場合があるからです。例えば「xを実数として、x2≧0が成立する」という文は、xがどの様な値を取ってもx2≧0が成立するため、真の命題です。真の命題の例の節で挙げた2番目の例や偽の命題の例の節で挙げた2番目の例も参照してください。
複数の命題を組み合わせて別の命題を作る事ができます。
例えば、太郎という15歳の男性がいると仮定すると、次の2つの文は真の命題です。
さらに、この2つの命題を組み合わせると、次の様な真の命題ができます。
参考:普通はこの様な冗長な表現はせず、「太郎は15歳で、かつ男性だ」や「太郎は15歳の男性だ」と表現するでしょうが、これらの表現は「太郎は15歳で、かつ、太郎は男性だ」の省略形だと考えます。
このように、「かつ」という接続詞を使って2つの命題をつなげる事で、新たな命題を作る事ができます。ちなみに、1番目と2番目の命題が真なので、3番目の命題も真です。
複数の命題をつなげて新しい命題を作るには、「かつ」、「または」、および「ならば」という接続詞や否定詞(~でない)を使います。
この様に、「かつ」、「または」、「ならば」および「~でない」を使い、複数の命題をつなげて作った(「~でない」を使う場合は元が単数の命題の場合もある)命題を、複合命題(compound proposition)といいます。3番目の命題も複合命題の一例です。
例えば、1番目と2番目の命題から、次の様な複合命題が作れます。
一方で、「かつ」、「または」、「ならば」、および「~でない」を含まず、それ以上分解できない肯定形の命題を、単純命題(simple proposition)といいます。
1番目の命題(太郎は15歳だ)や2番目の命題(太郎は男性だ)は単純命題です。