「論理回路」の解説

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2020年05月09日 公開
用語:論理回路
用語の読み方:ろんりかいろ
同義語・類義語:ディジタル回路デジタル回路
このページで解説している他の用語:2値論理回路二値論理回路多値論理回路アナログ回路閾値しきい値誤り訂正

論理回路(logic circuit)は電子回路の中で、扱う信号電圧が離散化されていおり、有限個の電圧値しか扱わない物を指します。

注意:定義によっては、信号が電圧軸方向に離散化(量子化)されているだけでは不十分で、時間軸方向にも離散化(標本化)されている信号を扱う回路でないと、論理回路ではないとする場合もあります。この解説記事では、扱う信号が標本化されていない場合も含む、広義の論理回路について説明します。

n種類(nは2以上の整数)の信号電圧を取り扱う論理回路は、n値論理回路といます。例えば、ある低い電圧と、ある高い電圧の、2種類の電圧を扱う論理回路は2値論理回路です。

3値以上の論理回路は、合わせて多値論理回路と呼ばれます。

実際に利用されている論理回路の大半は2値論理回路で、多値論理回路は少数派のため、単に論理回路と呼ぶと、2値論理回路の事を指す場合も多くあります。

2値理論理回路の扱う2種類の電圧は、一方が論理学における(T)に対応付けられ、他方が論理学における(F)に対応付けられる事が多くあります。この場合2値論理回路は命題論理(古典論理学の一種)で扱う論理演算を実行する回路と考える事もできます。

論理回路は、ディジタル回路(digital circuit)あるいはデジタル回路とも呼ばれます。

目次

1. アナログ回路と論理回路 … 1ページ
2. 論理回路の利点 … 1ページ
2-1. ノイズに強い … 1ページ

1.アナログ回路と論理回路

電子回路は大雑把に分類すると、アナログ回路と論理回路(ディジタル回路)の2種類に分類されます。(ただし、アナログ回路とディジタル回路がひとつの製品の中で組み合わされて使われる場合も多くあります ) アナログ回路と論理回路は、扱う信号の電圧を離散化するかどうかで区別されます。

電子回路では、信号を電圧の時間変化の形で伝える場合が多くあります。つまり、図1に示す様に、電圧の波形に意味を持たせ、送信側から受信側に情報を送る訳です。

図1、アナログ回路の信号の電圧波形
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図1、アナログ回路の信号の電圧波形

多くの電子回路では、時間変化する電圧波形に意味を持たせます。例えば、圧力センサが検出した圧力を、その圧力に比例した電圧で出力する場合、電圧波形は圧力の時間変化の様子を表します。また光センサが検出した光量を、その光量に比例した電圧で出力する場合は、電圧波形は光量の時間変化の様子を表します。

アナログ回路の場合、信号電圧に上限と下限は設けられるものの、その範囲内のどんな電圧も出力される可能性があります。

アナログ回路(analog circuit)では、信号電圧に上限と下限を設けるものの、その範囲内のどんな電圧も出力される可能性があります。

また、多くのアナログ回路は、時間的に連続に変化する信号を扱い、その電圧波形は、図1の様に連続でなめらかな変化をします。

論理回路は、電圧波形に意味を持たせて情報を伝える点ではアナログ回路と同じものの、扱う電圧値を有限の種類に制限してしまいます。

論理回路の信号の電圧波形の例を図2に示します。

図2、5値論理回路の信号の電圧波形
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図2、5値論理回路の信号の電圧波形

この波形には、0V、1V、2V、3V、および4Vの5種類の電圧しか出てきません。この様な波形を扱う論理回路を5値論理回路といいます。

この図の場合、隣り合う電圧の差が全て1Vになっていますが、多値論理回路で扱う電圧は、必ずしも等間隔である必要はありません。

図2をみて気づくのは、この波形に出てくる電圧は、0V、1V、2V、3V、および4Vのいずれかに必ずなっているという事です。この様に、論理回路では扱う電圧が有限個(図2の場合は5個)に制限されています。

扱う信号電圧がn種類(nは2以上の整数)の論理回路を、n値論理回路と呼びます。図2の場合は、5種類の電圧を扱っていますから、5値論理回路です。

扱う電圧が離散化されている(飛び飛びの電圧を扱う)ため、論理回路の信号電圧の波形は、図2の様に、飛び飛びの値を取ります。図1に示すアナログ回路の様な、連続でなめらかな曲線にはなりません。

図2では5値論理回路の信号波形を示しましたが、実際に用いられている論理回路の大半は2値論理回路です。それに対して、3値以上の論理回路(3値論理回路、4値論理回路、5値論理回路…)をまとめて、他値論理回路と呼びます。

参考:多値論理回路の中で比較的身近な物としては、USBメモリやSDカードなどのメモリ素子として使われているフラッシュメモリの中で、MLC(4値)、TLC(8値)、およびQLC(16値)と呼ばれるものが挙げられます。一つのメモリセルにMLCの場合2ビット、TLCの場合3ビット、QLCの場合4ビットの情報を記録する事で、部品数を抑えながら記憶容量を大きくしています。

2値論理回路の信号は、図3に示す様に、ある低い電圧とある高い電圧の2種類の電圧を取ります。

図3、2値論理回路の信号の電圧波形
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図3、2値論理回路の信号の電圧波形

2値論理回路の信号電圧は、ある低い電圧(この図の場合は0.4V)とある高い電圧(この図の場合は3.3V)の2種類です。

多くの2値論理回路では、信号電圧の高い方の電圧を回路の電源電圧と同じにし、かつ、信号電圧の低い方の電圧を0Vにしますが、必ずしもそうとは限りません。

2.論理回路の利点

論理回路をアナログ回路と比較する場合に、論理回路の方が有利であったり、優れている点について考えてみましょう。

2-1.ノイズに強い

電子回路で情報を伝達する場合を考えると、伝達中に電線で乗ってしまうノイズが問題になります。(図4参照)

図4、信号を伝達する際にはノイズが乗って波形が劣化する(概念図)
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図4、信号を伝達する際にはノイズが乗って波形が劣化する(概念図)

この図では、電線を1本の線で表していますが、実際には、基準電位(GND)の線と、信号電圧を伝える線の2本の電線が必要です。

世の中には、電界(電場)や磁界(磁場)を発生する物がたくさんあります。これらの物は、電線を伝わる信号にノイズ(雑音電圧)を乗せてしまいます。信号波形にノイズが乗ると、波形が劣化して、伝わる情報が一部損なわれます。

図4では、イメージしやすい様に、雷やモーターなど、強力なノイズ源を描きましたが、静電気を帯びた人が電線のそばにうろつくだけで、十分にノイズ源になります。つまり、どの様な状況でも、伝達の過程で、多かれ少なかれ信号波形は劣化するのです。

アナログ回路では、信号波形に一度ノイズが乗れば、元の信号波形を完全に復元する方法はありません。

参考:アナログ回路の場合でも、信号の周波数分布と、ノイズの周波数分布が異なる場合は、フィルタ回路を用いてノイズを除去し、ある程度は元の波形を復元できます。

一方で論理回路の場合は、送信側の電子回路が出力する電圧の候補が数種類(2値論理回路の場合は2種類)であると、受信側の電子回路が分かっていますから、多少のノイズが信号に乗っても、一番近い出力電圧の候補を選ぶ事で、元の信号が正しく復元できます。

図5は、ノイズが乗った2値論理回路の出力信号を、受信側で正しく復元している様子を表したものです。

図5、情報伝達中にノイズが乗ってしまった信号波形を閾値と比較して整形する様子
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図5、情報伝達中にノイズが乗ってしまった信号波形を閾値と比較して整形する様子

図5の(a)は、出力側の2値論理回路の出力波形を表しています。この2値論理回路は、0Vまたは3Vしか出力しません。

図5の(b)は、信号が電線を伝わる間に乗ってしまうノイズの波形を表しています。

図5の(c)は、受信側の2値論理回路で受信される、ノイズの乗った信号の波形です。つまり、同図(a)の波形と同図(b)の波形を足したものです。

図5の(d)は、受信側の2値論理回路内部で行われる波形整形の様子を表しています。出力信号は0Vまたは3Vであると分かっていますので、それらのちょうど中間の1.5Vと、受信した信号電圧とを比較します。受信した信号電圧が1.5Vよりも高いなら、出力側で3Vを出力した物とみなします。また、受信した信号電圧が1.5Vより低いなら、出力側で0Vを出力した物とみなします。その結果、受信した点線の波形が実線の波形に整形され、正しく元の波形が復元できている事が、この図よりわかります。

波形整形の際に、受信信号電圧と比較する一定電圧(図5(d)の場合は1.5V)の事を閾値(しきいち;threshold)といいます。

2値論理回路の場合、閾値は、低い方の出力電圧と高い方の出力電圧の平均値に設定すると、振幅の大きなノイズに対応する事ができます。また実際に、閾値を2つの出力電圧の平均値付近に設定する事が多いです。しかしながら、回路素子のばらつきで閾値がちょうど2つの出力電圧の平均値にならなかったり、回路構成上の理由で閾値を2つの出力電圧の平均値に設定できない事もあります。

2値論理回路では閾値は1つですが、多値論理回路ではもっと多くの閾値があります。n値論理回路では、n−1個の閾値があります。(図6参照)

図6、n値論理回路にはn−1個の閾値がある
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図6、n値論理回路にはn−1個の閾値がある

この図の縦軸は電圧ですが、横軸には特に意味がありません。

これまで、ノイズの影響により信号電圧が閾値を超える事がなければ、波形整形により出力電圧を復元できる事を説明しましたが、それに加えて、必要な情報に冗長な情報を加えて送信する事により、低い頻度であれば、信号電圧が閾値を超えてしまっても、元の情報を復元する事もできます。

2値論理回路の場合、低い方の信号電圧を2進数の0で表し、高い方の信号電圧を2進数の1で表す事が多いのですが、今、1011という信号を伝達する(1011の順に出力電圧を変えて送信する)場合を考えます。

そのまま単純に1011と信号を送れば、どこかで信号電圧が閾値を超えてしまう様なノイズが乗れば、受信側で元の情報を復元する事は不可能です。

例えば1011を送信して、ノイズにより3番目の数字が1から0に化けてしまうとすると、受信側で受け取る情報は1001になってしまいます。

今度は、1011を単純に送信するだけではなく、3回繰り返して101110111011と送信する場合を考えます。もしノイズの影響を考えなければ、最初の1回1011と送るだけで十分ですので、残りの2回の10111011の情報は冗長です(必要ありません)。

しかし、ノイズにより数字が化ける可能性があるのなら、この冗長性が役に立ちます。101110111011を送信した時に、ノイズにより前から3番目の数字が1から0に化け、また前から6番目の数字も0から1に化けると仮定しましょう。この場合、受信側で受信する情報は100111111011になります。

この場合、送信側が同じ情報を3回繰り返して送信している事を受信側が知っていれば、図7に示す様に、同じ数であるべき3つの数字の多数決を取る事で、元の情報を復元する事ができます。

図7、多数決により信号の誤りを訂正する様子
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図7、多数決により信号の誤りを訂正する様子

理解しやすい様に、数を4色に色分けしています。本来同じ数であるべき数が同じ色になる様に塗り分けています。

この図から分かる通り、数字が化ける確率がある程度低ければ、本来同じ数であるはずの数字の多数決を取る事で、送信した情報を正しく推定する事ができます。

この様に、情報の冗長性を利用して、誤りを訂正する技術を、誤り訂正(error correction)といいます。

図7の様に、同じ情報を3回繰り返して送る単純な方法では、本来必要な情報の3倍もの情報を送る必要がありますが、ハミング符号化等の数学的な手法を用いる事により、本来必要な情報の2倍未満の情報量で、効率よく誤り訂正をする事ができます。

以上のように、論理回路では、伝送中に信号に乗ってしまうノイズの影響を除去する手段が色々とあります。そのため、適切に設計された論理回路では、ノイズの影響を全く受けないで動作する事ができます。

これは言い換えると、適切に設計された論理回路は、コンピュータ上のシミュレーション通り動作するという事でもあります。アナログ回路の場合は、コンピュータで動作のシミュレーションを行っても、実際の回路の動作は、シミュレーション結果と完全には一致しません。

ノイズの影響を受けないというのは、一般的には論理回路の長所だと受け取られますが、ディジタル化された音楽や動画等が、劣化する事なくコピーできる様になる事で、著作権の侵害が起こりやすくなるという弊害もあります。

アナログのレコードやビデオテープを使っていた時代でも、音楽や動画の複製の問題はありましたが、複製する度に音質や画質が劣化していたので、それが抑止力となり、品質を求める愛好家は正規品を購入していました。

それが今や、ディジタル機器とインターネットの普及により、音楽や動画のコンテンツが、品質劣化を共わずに、不特定多数の人に違法な共有をされてしまう危険が高くなっているのです。

話が長くなってきましたので、今回はここで話を終わります。後日、引き続き論理回路の長所と短所について説明します。

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