Arduino用ヘッダシールドの製作(2)

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2015年07月02日 公開。

5.使用例(ロジックアナライザで信号観察する場合)

ディジタル回路の信号電圧を観察する場合、観察する信号の数が少なければオシロスコープでも観察できますが、信号の数が多かったり、やり取りしている信号をより高度に観察したい場合は、ロジックアナライザを使うと便利です。

後にグラフィックLCDモジュールの動作試験にロジックアナライザを活用した例について説明しますが、ロジックアナライザという測定器になじみのない人のために、まず簡単に、どういう測定器かを説明します。

5-1.ロジックアナライザとは

ディジタル回路(ロジック回路)で扱う信号は、例えば3.3Vと0Vいうように、原則的に高い電圧(H)と低い電圧(L)の2種類の電圧しかありません。

とはいえ、実際の回路では、図4(a)に示した様な理想的な2値データにはならずに、図4(b)の様にノイズや、基板の寄生容量や、反射などの影響で波形が変形してしまい、アナログ的な波形になってしまいます。

ただし信号を受信した側の素子においては、図4(c)に示す様に、閾値と呼ばれるあらかじめ決めた値を、受信電圧が上回るかどうかで、信号がHであるかLであるかを判定します。その結果、微妙な波形の変形の影響は無視される仕組みになっています。

図4、ディジタル信号の変形と再生
図4、ディジタル信号の変形と再生

図4(b)の様な、波形のアナログ的な振る舞いまで観察しなくていい場合、オシロスコープの様に電圧を正確に測定する必要はなく、単にHLかを測定し、表示や記録をすればいいため、オシロスコープより簡単な回路で信号の観察ができます。この様な装置をロジックアナライザといいます。

通常、ロジックアナライザは、HLを判別するための閾値を調整できるようになっています。ロジックアナライザの閾値を、実際の回路の閾値と同じに設定すれば、図3(c)に示した様な、実際の回路中の素子が認識している波形と同じ波形が画面に表示されるため、正確な回路の電圧を測定できていなくても、十分な測定結果が得られる場合が多いのです。

ロジックアナライザは、オシロスコープの様に正確な電圧波形は測定できないものの、その分多くの測定チャンネルを備えていたり、メモリに記憶できる信号の長さ(サンプル点の数)を大きく設定したりできます。4チャンネルやそれ以上のチャンネルを備えたオシロスコープは通常高価ですが、ロジックアナライザなら、16チャンネルの物でも趣味の延長で買えてしまう安価な物も存在します。

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5-2.今回使うロジックアナライザ

今回の記事で紹介するロジックアナライザは、ZEROPLUS社のLAP-C(16064)というモデルです。このロジックアナライザは、パソコンとUSB接続し、パソコンのディスプレイに波形を表示するタイプですので、非常に小型(下の写真を参照)で安価になっています。2015年7月現在の秋月電子での価格は、20,500円となっています。(私が買ったときはもっと安かった)

写真10、LAP-C(16064)と全付属品
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写真10、LAP-C(16064)と全付属品

安価ながら、信号のチャンネル数は16チャンネルで、記憶できる容量も、各チャンネル64kビット(64,000サンプル)と十分あり、しかも、波形を圧縮する機能を使えば、レスポンスが少し悪くなるものの、さらに長い波形も記録できます。

下の写真に示すように、色分けされた16本のケーブルで16チャンネルの信号を収集します。左側の黒いケーブルはGND用です。

写真11、信号を収集するケーブル
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写真11、信号を収集するケーブル

ケーブルの反対側は、下の写真の様にピンヘッダに接続できるコネクタが付いています。そのため、デバッグしたい基板のピンヘッダに、主な信号線があらかじめ引き出されていれば、非常にデバッグがやりやすくなります。

写真12、ケーブル先端のピンヘッダ接続用のコネクタ
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写真12、ケーブル先端のピンヘッダ接続用のコネクタ

またケーブルの先端には、次の写真に示す様な、部品のリードをつまめるクリップを装着する事もできます。このクリップを使うと、リード部品からだけでなく、SOPなどの一部の表面実装部品からも信号線が直接引き出せるのですが、やはりピンヘッダを使ってプロービング(信号の引き出し)をする方が、接続状態は安定します。

写真13、リードをつまむクリップを装着したケーブル
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写真13、リードをつまむクリップを装着したケーブル

次のページでは、グラフィックLCDモジュールの制御信号を、ヘッダシールドとロジックアナライザで観察した例を紹介します。

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