しなぷすのハード製作記

電子負荷の製作(1)

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電子負荷(右下の基板)の使用例
電子負荷(右下の基板)の使用例

目次

1. はじめに … 1ページ
2. 電子負荷の製作方法 … 1ページ
3. 電子負荷の動作原理 … 1ページ
4. 電子負荷の使い方 … 1ページ
5. 電子負荷の特性 … 1ページ
6. ニッケル水素電池の放電特性の測定 … 2ページ
7. ニッケル水素電池充電器の特性の測定 … 2ページ
8. 電子負荷の回路の詳細 … 3ページ
9. おわりに … 3ページ

1.はじめに

ニッケル水素電池充電器などの電源装置を作ると、電源に負荷をかけたときの特性を測る必要がでてきます。抵抗を負荷にして実験する場合、負荷電流を変えるには抵抗値を変える必要があり、許容損失の大きな(W数の多い)抵抗を何種類も用意する必要があります。そこで今回、負荷電流等を半固定抵抗で自由に設定できる電子負荷を製作しました。もともとはニッケル水素電池充電器の試験用に作った電子負荷ですが、電池の放電器としても使えます。

2.電子負荷の製作方法

今回製作した電子負荷の写真、回路図、部品表を次に示します。

写真1、電子負荷の外観
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写真1、電子負荷の外観
図1、電子負荷の回路図
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図1、電子負荷の回路図
表1、電子負荷の部品表
部品番号 数量 品名 型番/仕様 メーカー 備考 参考単価
R4 1 抵抗 1Ω±5%、1/8W     10円未満
R8,R9 2 抵抗 2Ω±5%、1/4W   1%の抵抗の方がよい 10円未満
R6 1 抵抗 10Ω±5%、1/8W     10円未満
R2 1 抵抗 330Ω±5%、1/4W     10円未満
R3,R5 2 抵抗 1kΩ±5%、1/8W     10円未満
R17,R18 2 抵抗 1.5kΩ±5%、1/8W     10円未満
R7,R10,R13,R14,R15,R16 6 抵抗 10kΩ±5%、1/8W     10円未満
R1 1 抵抗 75kΩ±5%、1/4W   1/8Wの抵抗でも可 10円未満
R11、R12 2 抵抗 1MΩ±1%、1/8W     10円未満
VR1 1 半固定抵抗 2kΩ     21円
VR2,VR4 2 半固定抵抗 10kΩ     21円
VR3 1 半固定抵抗 20kΩ     21円
C8,C10,C11 3 セラミックコンデンサ 100pF、50V     5円
C5,C6 2 セラミックコンデンサ 0.01μF、50V   耐圧は10Vで十分 5円
C1,C2,C9 3 セラミックコンデンサ 0.1μF、25V     5円
C3,C7 2 アルミ電解コンデンサ 10μF、16V     38円
C4 1 アルミ電解コンデンサ 220μF、25V     41円
Q1 1 Nch-MOSFET 2SK2232 東芝   100円
Q2,Q3 2 PNPトランジスタ 2SA1015 東芝   21円
L1 1 コイル LLI-8X10-100 Linkman 10μH 21円
D1,D2 2 ショットキーダイオード 1N5818 MIC   37円
D3,D4 2 PN接合ダイオード 1S1588 東芝 1SS133でも可 21円
U1 1 三端子レギュレータ MC78L05ACP モトローラ   25円
U2 1 OPアンプ LMC6482AIN ナショセミ   273円
LED1 1 LED 直径5mm、オレンジ     15円
LED2,LED3 1 LES 直径3mm、赤     21円
F1 1 ポリスイッチ RXEF050 レイケム   63円
T1 1 ターミナル 赤色端子     80円
T2 1 ターミナル 黒色端子     80円
TP1,TP2,TP3,TP4,TP5 5 テストピン SST-2-1 サンハヤト   16円
CN1 1 DCジャック 内径2.1mm、外形5.5mm     60円
  1 ヒートシンク 16PB017-01025 グローバル電子 20℃/W 40円

回路図どおりに部品をユニバーサル基板に実装すれば、電子負荷はできますが、いくつか注意点を書いておきます。

Q1(2SK2232)をヒートシンク(放熱器)にビスで留めて放熱しますが、Q1とヒートシンクの間には放熱用のシリコングリスを塗ってください。そうでないと熱がQ1からヒートシンクにうまく伝わりません。

この電子負荷は、小型に組むことを重視して、小型のヒートシンクを使っています。そのため、最大で2.5Wの電力までしか消費できません。もっと大型のヒートシンクを使えば、大電力を消費できるようになります。

2SK2232のピン配置は、型番が見える方向から見て、左から順にゲート、ドレイン、ソースの順です。

LED2はVR1やVR3のそばに配置してください。またLED3はVR2やVR4のそばに配置してください。(下の写真参照)

写真2、半固定抵抗の配置
写真2、半固定抵抗の配置

配線はむやみに長くならないように注意してください。発振の原因になります。参考までに、私の作った基板の裏側の写真を掲載しておきます。

写真3、電子負荷の裏側
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写真3、電子負荷の裏側
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3.電子負荷の動作原理

今回作成した電子負荷の電流-電圧特性は、図2のように定電圧領域と定電流領域があります。定電圧領域の電圧や定電流領域の電流は、半固定抵抗で調整できるようになっています。

図2、電子負荷の電流-電圧特性
図2、電子負荷の電流-電圧特性

起電力E、内部抵抗Rの電源に、この電子負荷をつなげる場合の事を考えて見ましょう。同じグラフに電子負荷の動作曲線(黒)と、電源の動作曲線(赤)を書き込んだのが図3です。

図3、電源に電子負荷をつないだ場合
図3、電源に電子負荷をつないだ場合

電源の動作曲線が縦軸と交わる点が起電力Eとなります。また電源の動作曲線は右肩下がりの直線で、傾きは-Rとなります。図3には、(1)~(4)の4本の動作曲線が書いてあります。これら4つのケースで、内部抵抗は全て一定です。起電力は(1)のケースが一番高く、(4)のケースが一番低くなっています。

実際の電圧と電流は、電子負荷の動作曲線(黒)と電源の動作曲線(赤)が交わる点になります。ケース(1)とケース(2)では、電源の動作曲線が電子負荷の動作曲線の定電流領域(垂直線)と交わっています。すなわち、電源の起電力Eが変化しても負荷電流が変化しない事になります。この場合、電子負荷は定電流負荷として働いています。

ケース(3)とケース(4)では、電源の動作曲線が電子負荷の動作曲線の定電圧領域(水平線)と交わっています。すなわち、電源の起電力Eが変化しても負荷電圧が変化しない事になります。この場合、電子負荷は定電圧負荷として働いています。

例えば電源としてニッケル水素電池を使った場合、最初は一定電流で放電しますが、ある電圧値に達した後は、一定電圧をキープするように放電を続けます。

4.電子負荷の使い方

電子負荷のCN1には、7.5V~14VのACアダプタを接続してください。ACアダプタを接続すると、電源ランプであるLED1が点灯します。

次に定電流領域の電流値と、定電圧領域の電圧値を設定します。

電流値の設定は、VR2とVR4で行います。まずVR4でおおまかに調整してから、VR4で微調整してください。設定した電流値は、TP2とTP3の間の電圧をデジタルマルチメータで読めば分かります。Vの単位で読んだ電圧を、そのままAの単位に置き換えれば、設定電流になります。例えばデジタルマルチメータの表示が0.3Vなら、電子負荷の電流設定は0.3Aです。電流値は最大0.5Aまで設定できます。

電圧値の設定は、VR1とVR3で行います。まずVR3でおおまかに調整してから、VR1で微調整してください。設定した電圧値は、TP1とTP3の間の電圧をデジタルマルチメータで読めば分かります。デジタルマルチメータの表示の2倍が、電子負荷の設定電圧になります。たとえばデジタルマルチメータの表示が1.5Vなら、電子負荷の設定電圧は3Vとなります。電圧値は最大10Vまで設定できます。

電流値を十分大きな値に設定すると、電子負荷は事実上定電圧負荷として利用できます。また、電圧値を十分小さな値に設定すると、電子負荷は事実上定電流負荷として利用できます。

電流値や電圧値を設定したら、電子負荷を電源に接続してください。赤い端子(T1)を電源の+側、黒い端子(T2)を電源の-側につないでください。逆につなぐと、電子負荷の故障の原因になります。

LED3は、設定電流どおりの電流が流れている場合、言い換えれば定電流負荷として働いている場合に点灯します。

またLED2は、設定電圧以下の電圧になっている場合に点灯します。定電圧負荷として働いている場合(負荷電圧が設定電圧どおりになっている場合)にもLED2は点灯しますが、そもそも電源の起電力が設定電圧以下になっている場合は、負荷電圧も設定電圧以下になってしまいます。こういった場合にもLED2は点灯します。

電子負荷で消費される電力の大半がQ1で熱になります。今回は小型のヒートシンクを用いたので、電子負荷は最大でも2.5Wしか消費できません。それ以上消費すると、発熱でQ1が壊れますが、今回の電子負荷では特に加熱防止用の保護回路は付けていませんので注意してください。

また、Q1に直列に1Ωの抵抗(R8とR9)が入っていますので、電子負荷の抵抗値は1Ω以下にはなりえません。Q1のON抵抗や配線の抵抗なども考えると、1.2Ω以下にはならないと考える方がいいでしょう。そのため、あまり低い設定電圧にすると、図2に示すようなきれいな定電流定電圧特性になりません。

電子負荷は、図4のグラフの網掛けの領域で使ってください。設定電圧や設定電流を網掛けの範囲に納めるのではなく、実際の負荷電圧や負荷電流が常時網掛けの範囲に入るようにしてください。

図4、電子負荷が使用できる領域
図4、電子負荷が使用できる領域

TP4とTP3の間の電圧をデジタルマルチメータで測れば、実際の負荷電圧が求まります。

またTP5とTP3の間の電圧をデジタルマルチメータ測れば、実際の負荷電流が求まります。この場合測定した電圧の単位をVからAに変えれば、そのまま負荷電流になります。例えばデジタルマルチメータの表示が0.3Vの場合、負荷電流は0.3Aとなります。(電流計を使うと、当然負荷電流が直接測定できますが、電流計の内部抵抗は、場合によっては数Ωもあります。電流計で生じる電圧降下が問題になる用途では、電流計を使わずに、TP5とTP3の間の電圧を測り、間接的に負荷電流を求める方が実験がうまくいきます)

5.電子負荷の特性

製作した電子負荷の特性を測定しました。実験風景を下に示します。

写真4、電子負荷の特性の測定風景
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写真4、電子負荷の特性の測定風景

左に写っている電源(KIKUSUI PMC18-3A)を右下の電子負荷に接続しています。デジタルマルチメータが2台ありますが、左側(Linkman LDM-81D)で負荷電流を測っています。右側のデジタルマルチメータ(SOAR 3510)では、負荷電圧を測っています。電流計(左側のデジタルマルチメータ)で電圧降下が起こるため、電圧計(右側のデジタルマルチメータ)は電源にではなく、電子負荷の方につないでいます。(電源の電圧表示は11.45Vなのに、電圧計の表示は9.93Vになっていますね。これらの差の1.52Vは、左側のデジタルマルチメータの内部抵抗で生じる電圧降下と考えられます。200.4mA流して1.52Vの電圧降下が生じているので、左側のデジタルマルチメータの内部抵抗は7.58Ωと計算できます)

電圧の設定を2V、電流の設定を200mAにした場合の特性のグラフを図5に示します。このグラフから、ほぼ理想的な定電流定電圧特性が得られていることが分かります。

図5、2V、200mAに設定した場合の電子負荷の特性
図5、2V、200mAに設定した場合の電子負荷の特性

次に電圧の設定を1V、電流の設定を500mAにした場合の特性のグラフを図6に示します。このグラフでも、ほぼ理想的な定電流定電圧特性が得られています。

図6、1V、500mAに設定した場合の電子負荷の特性
図6、1V、500mAに設定した場合の電子負荷の特性

ただし、定電圧領域を詳しく観察すると、完全に水平なグラフにはなっておらず、わずかながら右肩上がりになっているように見えます。図6ではその様子が詳しく分からないので、垂直方向に拡大したグラフが図7です。

図7、1V、500mAに設定した場合の電子負荷の特性(垂直方向に拡大)
図7、1V、500mAに設定した場合の電子負荷の特性(垂直方向に拡大)

拡大すると分かるのですが、ほぼ直線状に右肩上がりのグラフになっています。この傾きを求めると、おおよそ43mΩとなります。この抵抗分は、おそらく発振防止のため(後述)に入れた10μHのコイルの巻き線抵抗が主な原因になっているのではないかと考えています。電圧が変動するとは言え、500mA電流が変動しても20mV程度の電圧変動に抑えられているので、実験の際に大きな支障になることは少ないでしょう。

念のため、図6の定電流領域を詳しく観察できるように、水平軸方向に拡大したグラフも掲載しておきます。

図8、1V、500mAに設定した場合の電子負荷の特性(水平方向に拡大)
図8、1V、500mAに設定した場合の電子負荷の特性(水平方向に拡大)

定電流領域の方は、完全に垂直なグラフになっていることが分かります。

次のページでは、今回製作した電子負荷を使って、ニッケル水素水素電池とその充電器の特性を評価してみます。

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