電子負荷の製作(2)

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6.ニッケル水素電池の放電特性の測定

製作した電子負荷を使って、電源の特性を測った例を2つ紹介します。まずは、ニッケル水素電池の放電特性を測った例です。

ACアダプタをCN1に接続した状態で、電子負荷を1V、0.5Aに設定します。1Vに設定するには、VR1とVR3を使ってTP1とTP3の間の電圧を0.5Vに調整してください。0.5Aに設定するには、VR2とVR4を使ってTP2とTP3の間の電圧を0.5Vに調整してください。これで、電子負荷は放電電流0.5A、放電終止電圧1Vの放電器として働くようになります。

写真5、ニッケル水素電池の放電特性の測定風景
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写真5、ニッケル水素電池の放電特性の測定風景

上の写真のように端子T1とT2に電池ボックスを接続し、電池を入れれば放電が始まります。TP4とTP3の間の電圧を測れば、、電池の両端電圧が求まります。またTP5とTP3の間の電圧を測れば、放電電流が求まります。TP5とTP3の間には1Ωの抵抗が入っているので、電圧値の単位をVからAに読み替えれば、そのまま電流値が求まります。

放電の様子を観察するには、デジタルマルチメータなどで電圧を測定してもいいのですが、長時間の測定になると測定者が時間を拘束されてしまいますので、ここでは以前紹介したように、オシロスコープをデータロガーとして使うことにします。

単3エネループを放電した際の特性を測定した結果を次のグラフに示します。赤色の曲線が電池の電圧を表しています。また、青色の曲線が放電電圧を表しています。

図9、電子負荷を用いて測定した単3エネループの放電特性
図9、電子負荷を用いて測定した単3エネループの放電特性

放電初期には、500mA一定で放電していることが分かります。放電に伴い、電池の電圧も徐々に低下しています。しかし、おおよそ3.53時間経つと、状態が大きく変化します。放電電流は急激に減少し、電池の電圧は約1Vで一定になります。

3.53時間以前は電子負荷は定電流負荷として機能しています。そのため、放電電流は、設定電流の0.5A(500mA)に維持されます。3.53時間以降は電子負荷は定電圧負荷として機能し、設定電圧の1Vを維持します。

500mAの放電が3.53時間続いていることから、電池の容量は500×3.53≒1770mAhと計算されます。

なお、一定電流(500mA)で放電しているときはLED3が点灯しています。電池が放電終了電圧(1V)に達し、電圧を維持し始めると、LED3は消灯し、LED2が点灯します。この様に、LEDの状態を見れば、放電が終わったかどうかが分かります。

図10、電子負荷を用いて測定した単3エネループの容量
図10、電子負荷を用いて測定した単3エネループの容量

上のグラフは、青い線が放電電流(図9の青い線と同じ)、赤い線が放電電荷(積算電流)を表しています。放電電荷は、放電電流を台形積分して求めました。充電電流が低下し始める直前の3.53時間において、1770mAh放電しているのが分かります。それ以降は放電のペースが激減するので、放電電荷のグラフの傾きも水平に近くなります。7時間の時点で1860mAh放電しました。

オシロスコープをデータロガーとして使うの記事で、ダイオードと抵抗を直列接続にして簡易型の放電器を作った話を書きました。その時の放電特性と、今回作った電子負荷を使った場合の放電特性を比べると、今回の方が、短時間で電池を放電できており、しかも過放電を確実に防げていることが分かります。

放電電流と放電が持続できる時間の積はおおむね一定で、それらの積を容量と呼ぶと以前説明しましたが、厳密に言えば、容量は放電条件(放電電流や放電終止電圧など)で多少変化します。その変化の様子を調べようと思うと、放電電流や放電終止電圧を変えて、何度か放電の実験をしなければならないのですが、電子負荷を使うと、放電条件を簡単に変更できるので便利です。

今回は電池1本を放電しましたが、状態の揃っている電池(同じ銘柄の電池で、必ず同じ組み合わせで充放電をしている電池)の場合は、複数本直列につないで、まとめて放電させることもできます。この場合、放電終止電圧も、電池の本数に応じて高くする必要があります。

例えば、電池2本をまとめて放電する場合、放電終止電圧も約2倍の2Vに設定すればうまく放電できます。ただし、例えば2.1Vなどと、少し高めに設定しておく方が、電池の特性にばらつきのあった場合に一方のセルを過放電してしまうことを防げて、無難かも知れません。

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7.ニッケル水素電池充電器の特性の測定

以前、抵抗を負荷にして、自作のニッケル水素電池充電器の負荷特性を測定しましたが、今回、同じ測定を、電子負荷を用いて行いました。測定風景を次に示します。

写真6、ニッケル水素電池充電器の特性の測定風景
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写真6、ニッケル水素電池充電器の特性の測定風景

左側のデジタルマルチメータ(Linkman LDM-81D)は、入力電流を測定しています。

右側のデジタルマルチメータ(SOAR 3510)は、入力電圧、出力電圧、および出力電流を測っています。どの測定値を測定するかで、プローブをつなぎ変えています。上の写真は、出力電圧を測っている際の写真です。

入力電圧が5Vおよび10Vの場合の、電流-電圧特性および電流-効率特性を次の2つのグラフに示します。

図11、入力電圧が5Vの場合の電流-電圧特性
図11、入力電圧が5Vの場合の電流-電圧特性
図12、入力電圧が10Vの場合の電流-電圧特性
図12、入力電圧が10Vの場合の電流-電圧特性

抵抗を負荷にした場合より、今回のように電子負荷を負荷に用いる方が、条件を細かく設定できるため、測定点数の多い、きれいなグラフが得られていることが分かります。また、抵抗を負荷にして実験したときは、測定点を1点取るごとに抵抗を半田付けしていたので、とても時間がかかりましたが、今回は半固定抵抗で負荷条件を設定できるので、実験の時間が短縮されました。

測定のコツですが、測定範囲によって定電流負荷と定電圧負荷を切り替えるのがポイントです。

図13、定電流負荷と定電圧負荷の使い分け
図13、定電流負荷と定電圧負荷の使い分け

図13は図11の出力電圧特性のみを取り出したグラフです。出力電圧が1.3V以下の領域では、充電器はおおむね定電流領域に入っています。定電流領域では、電子負荷を定電圧負荷に設定して測定します。VR4を右に回しきって設定電流を十分大きくしておけば、電子負荷は定電圧負荷として振舞います。この状態でVR3とVR1を調整することにより、電圧を自由に設定することができます。

一方で、出力電流が200mA以下の領域では、充電器はおおむね定電圧領域に入っています。定電圧領域では、電子負荷を定電流負荷に設定して測定します。VR3を左に回しきって設定電圧を十分小さくしておけば、電子負荷は定電流負荷として振舞います。この状態でVR4とVR2を調整することにより、電流を自由に設定することができます。

次のページでは、電子負荷の発振とその対策について説明します。

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