この連載の1ページでは、主に精度5%の部品に使われるE24系列(表1)について説明しました。また2ページ(前回)では、主に5%より精度の低い部品に使われるE3系列・E6系列・E12系列(表2)について説明しました。今回は、精度が5%より良い部品で使われるE系列について考えてみます。
既に多くの方がお気づきのように、精度が5%より高い部品に対しては、E24系列よりも数字の種類が多い系列を使います。E3系列、E6系列、E12系列、E24系列という具合に倍々ゲームで増えて行くルールに則り、精度の高い部品に対してはE48系列・E96系列・E192系列というE系列を使います。
例えば、E48系列では初項が1で公比が4810の等比数列を丸めた数を使います。公比の4810を計算すると1.0491397…となります。1.1を大きく下回っていますから、2桁の数値に丸めたのでは、少し厳しそうです。(隣り合う項、丸めた後に同じ数になってしまう可能性がある) E96系列の公比は9610≒1.0242752、E192系列の公比は19210≒1.0120648ですから、これらのE系列では、2桁に丸めたのでは、同じ数字がなおさら頻繁に出てきます。そこでJIS C 5063では、E48系列、E96系列、およびE192系列においては、数字を3桁に丸める決まりになっています。
E48系列、E96系列、E192系列の表を次に示します。この表を見て分かるとおり、E48系列は、E96系列の数字を1つ置きに抜き出したものです。同様に、E96系列は、E192系列の数字を1つ置きに抜き出したものです。
E48系列 | E96系列 | E192系列 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.00 | 1.00 | 1.02 | 1.00 | 1.01 | 1.02 | 1.04 |
1.05 | 1.05 | 1.07 | 1.05 | 1.06 | 1.07 | 1.09 |
1.10 | 1.10 | 1.13 | 1.10 | 1.11 | 1.13 | 1.14 |
1.15 | 1.15 | 1.18 | 1.15 | 1.17 | 1.18 | 1.20 |
1.21 | 1.21 | 1.24 | 1.21 | 1.23 | 1.24 | 1.26 |
1.27 | 1.27 | 1.30 | 1.27 | 1.29 | 1.30 | 1.32 |
1.33 | 1.33 | 1.37 | 1.33 | 1.35 | 1.37 | 1.38 |
1.40 | 1.40 | 1.43 | 1.40 | 1.42 | 1.43 | 1.45 |
1.47 | 1.47 | 1.50 | 1.47 | 1.49 | 1.50 | 1.52 |
1.54 | 1.54 | 1.58 | 1.54 | 1.56 | 1.58 | 1.60 |
1.62 | 1.62 | 1.65 | 1.62 | 1.64 | 1.65 | 1.67 |
1.69 | 1.69 | 1.74 | 1.69 | 1.72 | 1.74 | 1.76 |
1.78 | 1.78 | 1.82 | 1.78 | 1.80 | 1.82 | 1.84 |
1.87 | 1.87 | 1.91 | 1.87 | 1.89 | 1.91 | 1.93 |
1.96 | 1.96 | 2.00 | 1.96 | 1.98 | 2.00 | 2.03 |
2.05 | 2.05 | 2.10 | 2.05 | 2.08 | 2.10 | 2.13 |
2.15 | 2.15 | 2.21 | 2.15 | 2.18 | 2.21 | 2.23 |
2.26 | 2.26 | 2.32 | 2.26 | 2.29 | 2.32 | 2.34 |
2.37 | 2.37 | 2.43 | 2.37 | 2.40 | 2.43 | 2.46 |
2.49 | 2.49 | 2.55 | 2.49 | 2.52 | 2.55 | 2.58 |
2.61 | 2.61 | 2.67 | 2.61 | 2.64 | 2.67 | 2.71 |
2.74 | 2.74 | 2.80 | 2.74 | 2.77 | 2.80 | 2.84 |
2.87 | 2.87 | 2.94 | 2.87 | 2.91 | 2.94 | 2.98 |
3.01 | 3.01 | 3.09 | 3.01 | 3.05 | 3.09 | 3.12 |
3.16 | 3.16 | 3.24 | 3.16 | 3.20 | 3.24 | 3.28 |
3.32 | 3.32 | 3.40 | 3.32 | 3.36 | 3.40 | 3.44 |
3.48 | 3.48 | 3.57 | 3.48 | 3.52 | 3.57 | 3.61 |
3.65 | 3.65 | 3.74 | 3.65 | 3.70 | 3.74 | 3.79 |
3.83 | 3.83 | 3.92 | 3.83 | 3.88 | 3.92 | 3.97 |
4.02 | 4.02 | 4.12 | 4.02 | 4.07 | 4.12 | 4.17 |
4.22 | 4.22 | 4.32 | 4.22 | 4.27 | 4.32 | 4.37 |
4.42 | 4.42 | 4.53 | 4.42 | 4.48 | 4.53 | 4.59 |
4.64 | 4.64 | 4.75 | 4.64 | 4.70 | 4.75 | 4.81 |
4.87 | 4.87 | 4.99 | 4.87 | 4.93 | 4.99 | 5.05 |
5.11 | 5.11 | 5.23 | 5.11 | 5.17 | 5.23 | 5.30 |
5.36 | 5.36 | 5.49 | 5.36 | 5.42 | 5.49 | 5.56 |
5.62 | 5.62 | 5.76 | 5.62 | 5.69 | 5.76 | 5.83 |
5.90 | 5.90 | 6.04 | 5.90 | 5.97 | 6.04 | 6.12 |
6.19 | 6.19 | 6.34 | 6.19 | 6.26 | 6.34 | 6.42 |
6.49 | 6.49 | 6.65 | 6.49 | 6.57 | 6.65 | 6.73 |
6.81 | 6.81 | 6.98 | 6.81 | 6.90 | 6.98 | 7.06 |
7.15 | 7.15 | 7.32 | 7.15 | 7.23 | 7.32 | 7.41 |
7.50 | 7.50 | 7.68 | 7.50 | 7.59 | 7.68 | 7.77 |
7.87 | 7.87 | 8.06 | 7.87 | 7.96 | 8.06 | 8.16 |
8.25 | 8.25 | 8.45 | 8.25 | 8.35 | 8.45 | 8.56 |
8.66 | 8.66 | 8.87 | 8.66 | 8.76 | 8.87 | 8.98 |
9.09 | 9.09 | 9.31 | 9.09 | 9.20 | 9.31 | 9.42 |
9.53 | 9.53 | 9.76 | 9.53 | 9.65 | 9.76 | 9.88 |
E48系列は精度2%の部品に使うと、丸め誤差と精度のバランスが取れています。同様の理由で、E96系列は精度1%、E192系列は精度0.5%の部品に向いています。JIS C 5063では、「これらの標準数列(注:E48~192系列のこと)は、許容差が±5%よりも狭い部品だけに適用する。許容差が±5%よりも狭い場合には、特殊な要求がない限り、E24標準数列(注:E24系列のこと)を使用しない」と定められています。
精度1%の金属皮膜抵抗は、比較的手に入り易い部品です。5%よりも高精度の部品は「特殊な要求がない限り」E24系列を使用しない事になっています。しかし、例えばE96系列の抵抗値を使おうと思っても、現実にはアマチュアレベルでE96系列の1%の抵抗を手に入れるのは困難です。
この表は、KOAの金属皮膜抵抗のデーターシートに載っていたものです。抵抗値範囲の欄に注目してください。精度1%(Fランク)の抵抗は、E96系列だけでなく、E24系列でも供給されることが、高らかに謳われています。
中小の流通業者(例えば秋葉原や日本橋のパーツ屋さん)にとって、E96系列の抵抗を揃えるのは負担が大きいので、たいていは、たとえ精度1%の抵抗であれ、E24系列の抵抗値の物を在庫しているのです。E96系列の抵抗が手に入るのは、大口の需要家が大手商社に注文した時だけと考えておく方が無難です。
上の写真は手元にあった精度1%、1/8Wの金属皮膜抵抗(メーカー不明)を撮影したものです。上側に写っている抵抗のカラーコードは緑青黒茶茶で、5.60kΩです。下側の抵抗は青灰黒茶茶で、6.80kΩです。有効数字3桁で表示されているものの、抵抗値自体はE96系列にはなく、E24系列の物です。
精度1%の抵抗が、E96系列ではなくE24系列でしか手に入らないとしたら、そのままでは1%の高精度を十分活用できません。例えば3.14kΩの高精度抵抗が欲しいと思った場合に、E96系列の中から選べるとすれば、3.16kΩと、比較的近い抵抗値が選べますが、E24系列から選ぶとすれば、3.0kΩになります。抵抗の精度(1%=0.03kΩ)よりも、丸め誤差(0.14kΩ)の方がかなり大きな値になってしまいます。
こういう場合は、E24系列の2本の抵抗を直列または並列に接続し、合成抵抗を、目的の抵抗値に近づける工夫をします。
例えば3kΩと150Ωの抵抗を直列に接続すると、直列合成抵抗は3+0.15=3.15[kΩ]になります。また3.9kΩと16kΩの抵抗を並列に接続すると、並列合成抵抗は(3.9×16)÷(3.9+16)≒3.1357[kΩ]となります。このように、E24系列の抵抗2本を使えば、E96系列の抵抗を使うより、むしろ丸め誤差を小さくする事ができます。
ただ、どの様な抵抗値を組み合わせると、うまく目的の抵抗値を近似できるのかという計算は、多数回の試行錯誤をせねばならず、時間がかかります。そういう場合は是非抵抗値合成計算サービスをご利用ください。オンラインで簡単に抵抗のペアの候補を見つけることができます。下の図は、3.14kΩを近似的に合成するE24系列の抵抗値のペアの候補を、同サービスで計算させた場合の結果です。(この画面は、2014年2月6日時点でのものです。将来、仕様変更により、画面が変わる可能性があります) 近似精度が良い順に候補が複数示されるので、手持ちの部品を活用して抵抗値を近似する事が容易になります。