「電子工作で学ぶ論理回路入門」を出版しました(2)

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2024年09月02日 公開。
2024年09月03日 記事のタイトルを、「論理回路の本を書きました」から「『電子工作で学ぶ論理回路入門』を出版しました」に改題。

前のページに続いて、「電子工作で学ぶ論理回路入門」という書籍の紹介をしています。

3.本書の特長

本書は、(1)論理回路の理論を基礎から学べ、さらに(2)ブレッドボードを使って論理回路を組み立てて、実際に動作を確認する事で、理解を深められるのが特徴になっています。以下に、それぞれの特徴について、本書の一部を引用する形で紹介します。

3-1.理論を基礎から説明

本書は、初学者が読む事を念頭に、論理回路について、基礎的な事柄から説明しています。この節では、いくつかの例を挙げて、本書がどの様な方針で論理回路の理論を説明しているかを紹介します。

3-1-1.例1:論理回路の電源端子の説明

本書では、ある程度論理回路に慣れた人からすれば、説明が不要に思われる位に当然に思える事も、説明しています。例えば、NOT回路の端子の説明では、図1に示す様に、入力端子と出力端子だけではなく、電源端子についても説明しています。

図1、本書でのNOT回路の端子の説明
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図1、本書でのNOT回路の端子の説明

電源端子の話を強調して書くのは、以前、Yahoo!知恵袋である大学院生が、「回路図通りに論理回路を作ったのに動作しません、どうしてですか?」という質問をしていたのを、私が見た事があるからです。その大学院生は、電源端子が記入されていない論理回路の回路図を見て、信号線だけ配線して、電源無しで論理回路を動かそうとしたみたいなのです。

理論書においては、電源端子を省略した論理回路の回路図が良く載っています。NOT回路の説明に関しても、入力端子と出力端子の2端子の回路であるかの様に解説されている本が良くあります。

少し論理回路を作った事がある人なら、電源無しで論理回路が動作しない事は理解しています。その様な人は、何も説明を受けないでも、NOT回路、AND回路OR回路等のゲートを信号線で結んだだけの回路図を見ても、ロジックICのVCC端子(あるいはVDD端子)は電源のプラス側につなぎ、GND端子(あるいはVSS端子)は電源のマイナス側につなぎます。

しかし、全くの初学者にはその様な事は分かりません。そこで、論理回路には電源端子が必ずあるものの、回路図では省略される事がある事を、最初に説明しました。

3-1-2.例2:基本的なゲート回路がどの様に作られているかを解説

基本的な論理素子の働きを、真理値表等でで把握しておけば、ロジックICを使って論理回路を作れる様になります。NOT回路のICの中にどういう部品が入っていて、どういう仕組みで0を入力した時に1を出力し、1を入力した時に0を出力するのか等は、必ずしも理解していなくても、簡単な論理回路の設計は一応できます。

そのため、ロジックICの中身の話はほとんどしない解説書もあります。つまり、論理回路を01の2種類の数字だけが出てくるパズルの様に説明しているのです。

しかし、論理回路はあくまでも電子回路であり、パズルではありません。ロジックICの中身をある程度理解しておかないと、例えば「CMOS ICの入力端子の論理を未接続にしてはいけない」と言われても、その理由が納得できないのです。

そこで、本書では、NOT回路、AND回路、OR回路等の基本的な論理素子が、どの様な仕組みで動くのかについて、初心者にもなるべく分かりやすい様に、説明しています。

本書では、機械的なスイッチ(押しボタンスイッチ)で論理回路を作る方法と、リレーを使って論理回路を作る方法と、CMOS構成で論理回路を作る方法の3種類を、第3章で説明しています。

ただし、前述の様に、NOT、AND、OR等の回路がどういう原理で動作しているかを知っていなくても、とりあえず論理回路は作れますので、第3章を読み飛ばしても、後の章が理解できる様に書いてあります。

AND回路を、押しボタンスイッチ、リレー、およびNMOSとPMOS(CMOS構成)で作る方法を説明している箇所を、それぞれ図2~4図に示します。

図2、押しボタンスイッチでAND回路を作る方法の解説
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図2、押しボタンスイッチでAND回路を作る方法の解説
図3、リレーでAND回路を作る方法の解説
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図3、リレーでAND回路を作る方法の解説
図4、CMOS構成でAND回路を作る方法の解説
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図4、CMOS構成でAND回路を作る方法の解説

現在では、リレーを使って論理回路を作る事はほとんどなくなりましたが、リレーには、電磁石が鉄を引き寄せる事を理解していれば、動作原理が理解できるという利点があります。電磁石で鉄を吸い寄せる実験は、小学校でやりますので、電磁石で論理回路ができる事を知れば、多くの読者が論理回路に親近感を感じるのではないでしょうか。

CMOSの論理回路を作る時に必要なNチャネル MOS-FET(NMOS)とPチャネル MOS-FETについては、大学で電子系の学部に進まないと習わないので、初心者には理解しにくいと思います。

本書では、NMOSとPMOSのスイッチング作用について、数式を使わなくても理解できる範囲で、大まかな説明をしています。

参考:本書の下書きの初校では、NPNトランジスタで論理回路を作る方法と、(PMOSを使わずに)NMOSだけで論理回路を作る方法についても説明をしていたのですが、ページ数が多すぎる旨を編集から指摘されましたので、泣く泣くカットしました。

現在では、CMOSのロジックICを使うのが主流ですが、前述の様に入力端子を未接続にしておくと、出力段に貫通電流が流れて、色々とトラブルの原因になります。こういう現象も、CMOS構成の論理回路の動作原理を理解していれば、理解できる様になります。(図5参照)

図5、貫通電流の説明
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図5、貫通電流の説明

3-1-3.例3:論理圧縮や回路の変形を図で分かりやすく説明

第5章で回路の最適化(主に論理圧縮)の話が出てきます。論理圧縮を理解するには、公式を使って回路を変形する事を憶える必要があります。本書でも、他の論理回路の書籍と同様に、公式集が出てきます。(図6参照)

いくつかの論理回路の本を読んだのですが、公式の紹介だけで終わっている解説書が多くあります。

しかし実際の回路では、回路が論理式ではなく回路図で表されている事が多く、直観的に公式を使えない事もあります。

そこで本書では、公式の内容を回路図で表すとどうなるかを示し、回路図上で回路の変形をし易い様に工夫しています。(図7参照)

図6、回路の変形に使う公式
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図6、回路の変形に使う公式
図7、回路図上での公式の説明
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図7、回路図上での公式の説明

また図8に示す様に、実際の回路の変形の様子を、多数の図を使って分かりやすく説明しています。

図8、回路の変形の方法を複数の図を使って説明
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図8、回路の変形の方法を複数の図を使って説明

次のページでは、ブレッドボードを使った論理回路の動作確認について紹介します。

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