最近は、電子工作が流行っているようです。私はしなぷすのハード製作記という、Arduinoを中心とした電子工作のサイトを運営していますが、月間2万アクセス以上、4万ページビュー以上のアクセスがあります。
「しなぷすのハード製作記」のいくつかの記事をまとめた、Arduino 電子工作(工学社)という本も書いたのですが、それに目が留まったのか、他の出版社から、「電子工作初心者向けの本を書きませんか」とお誘いが来ました。
まだ本を書くかどうかはわかりませんが、予備的な調査のため、関連書籍として以下の2冊を買いました。
- これ1冊でできる!ラズベリー・パイ超入門 改訂第3版(福田和弘著、ソーテック社)
- 作る、できる/基礎入門 電子工作の素(後閑哲也著、技術評論社)
今日は、これらの本の内、「これ1冊でできる!ラズベリー・パイ超入門 改訂第3版」を紹介します。
まず、この本の目次を挙げておきます。
本書はRaspberry Pi 1/2/3に対応しています。
まず、Raspberry Piの概要の説明、各モデルの違い、電源やディスプレイなどの配線法、OSのインストール法などの、基本的な事項から説明が始まります。(Chapter 1~3) 図を多用して、初心者でもRaspberry Piを導入できる様に書いてあります。
Chapter 4では、Raspberry Piを小型のLinuxマシンとして扱う方法が解説されています。この章ではRaspbianで日本語の入力・表示をできる様にする設定方法や、Webサーバーのnginx、サーバーサイドプログラミングによく使われるインタプリタ言語のPHP、データベースソフトのMySQL、Windowsとファイル共有するためのSambaのインストール方法や導入方法について解説されています。
Chapter 5では、Raspberry Piでプログラミングをするための言語として、ScratchとPythonを紹介しています。
Chapter 6以降が電子工作に関連する章になります。
Chapter 6ではGPIOの端子配列、電子部品の購入方法、主な電子部品の説明、オームの法則などの基礎理論の説明、回路図の読み方、Raspberry Piを使ったLEDやモータの制御、Raspberry Piでスイッチの状態を読み込む方法などが解説されています。
Chapter 7では、I2Cデバイスの扱い方を説明しています。Raspberry Piは、CPUの規模の割には使えるI/Oピンが少ないので、2ピンで多くのデバイスを制御できるI2Cに力を入れて解説しているのでしょう。
I2Cデバイスの例として、12ビットA/DコンバータICのADS1015のブレークアウト基板、気温・湿度・気圧センサICのHIH-6130のブレークアウト基板、I2C対応のキャラクタ液晶のACM1602NIを取り上げ、それらの接続法や利用法を説明しています。
Chapter 8ではRaspberry Piの応用例を3つ紹介しています。この章で解説されている応用回路は、全てブレッドボードを使って組まれており、極力半田付けしないで組み立てられるように配慮されています。(逆に、実際に応用例を実用的に使おうとするなら、ユニバーサル基板などに部品を半田付けしたり、ケースに入れたりして回路を固定する工夫が必要になります)
応用例の1つ目は、着信メールを液晶画面で通知する装置の製作です。Gmailのサーバーに未読メールの件数を問い合わせ、その結果をキャラクタ液晶に表示します。
応用例の2つ目は、CdS(カドミウムセル)で明るさを検出し、明るくなると音楽を再生して周囲に知らせる装置の製作です。CdSの出力は、Chapter7で説明したA/DコンバータIC、ADS1015で取り込みます。
応用例の3つ目は、人が近づくと自動的に写真をWebサーバーに公開する装置の製作です。焦電センサで、赤外線の変化により人が近づいたのを検出し、カメラで写真撮影してWebサーバーでネット上に公開します。これは、防犯センサに実際に使えそうな実用的な応用例です。
以上の様に、Raspberry Piの初心者がRaspberry Piを使い始めて、応用するまでの幅広い内容を、270ページの本にまとめています。
Raspberry Piのセットアップの方法は、写真や図を使って丁寧に説明してありますので、使い始めに参照する1冊として参考になるでしょう。
また、本書に載っている色々な作例を、そのまま作ると、電子工作でどういう事ができるのかを理解するきっかけになると思います。
ただし、かなり幅広い内容を1冊の本にまとめていますので、自分で何か設計して作るところまでの知識を手に入れるには不十分だと思います。自分の使いたい用途にRaspberry Piを応用するには、必要な分野の専門書を読んで勉強する事が必要だと思います。