2020年01月03日 | 公開 |
当サービスでは、バイポーラトランジスタの一種であるNPNトランジスタを用いて作った、シュミットトリガ回路の動作解析および設計をします。
最初は動作解析・設計を行う回路の説明から話が始まりますが、説明を飛ばして当サービスを使いたい方は、パラメータの入力にお進みください。
動作解析や設計の対象になるのは、図1に示す回路の非反転型シュミットトリガ回路です。
図1の回路の動作原理について、詳しい事は「シュミットトリガ回路」の解説(5)に載っていますので、ここでは簡単に説明する事にします。
この回路は、Q1とQ2に2N3904などの、一般的な小信号用NPNトランジスタを使えば、トランジスタの型番に関係なく、ほぼ同じ入出力電圧特性になります。
図1の回路の入出力電圧特性の例を、図2に示します。
図1の回路は、低い電圧を入力すると出力電圧も低い電圧VLになり、高い電圧を入力すると出力電圧も高い電圧VHになる、非反転型の2値化回路として動作しますが、入力電圧が上昇中に出力電圧がVLからVHに変わる際の閾値VTLHが、入力電圧が下降中に出力電圧がVHからVLに変わる際の閾値VTHLよりも高いという、ヒステリシス特性を持ちます。
図1の回路では、まず電源電圧VCCを決め、R1、R2、R3の3つの抵抗値を適切に設定する事により、2つの閾値、VTHLとVTLHをコントロールする事ができます。
図1の回路のVCC、R1、R2、R3の4つのパラメータを与える事でVTLH、VTHL、およびVLの3つの電圧を求める事を、このページでは、図1のシュミットトリガ回路の動作解析と呼ぶ事にし、VCC、VTLH、VTHL、およびR1の4つのパラメータを与える事で、その特性を実現するR1、R2、およびR3の値の組み合わせを求める事を、このページでは図1の回路の設計と呼ぶ事にします。
注:VCC、VTLH、およびVTHLの3つの要求仕様(パラメータ)を定めるだけでは、その特性を実現するR1、R2、R3の値の組み合わせが無数に求まります。そこで、3つの抵抗値の中のR1をさらに指定する事で、R1、R2、R3の値の組み合わせを1通りに絞っています。
なお、図1の回路では、VHは必ずVCCと同じ値となり、VLは、必ずVTLHより0.7V低い値になります。
次のパラメータの入力のモード選択欄で動作解析を選べば動作解析が行え、設計を選べば設計が行えます。必要なパラメータを入力して動作解析するボタン(動作解析の場合)または設計ボタン(設計の場合)をクリックすると、図1の回路の動作解析あるいは設計が行えます。
最初は、デフォルトのパラメータのまま、動作解析や設計を行ってみてください。
なお、Q2として使用するトランジスタのhFE(エミッタ接地電流増幅率)が低いと、図1の回路が正常に動作しない可能性がありますので、そのチェックのためにQ2のhFEの最小値も入力する様になっています。Q2のhFEの最小値は、後述する制約条件の計算結果にのみ影響し、動作解析時のVTLH、VTHL、およびVLの計算値や、設計時のR1、R2、およびR3の計算値には影響しません。
注:Q2のhFEの最小値と、いうのは、同一型番のトランジスタでもhFEの値にバラツキがあり、また使用条件によってもhFEの値に変化が生じるので、最もhFEが低い個体で、最もhFEが低くなる時のhFEの値を意味しています。
当サービスで動作解析をする際には、「シュミットトリガ回路」の解説(8)で解説した数式を用いています。また、当サービスで設計をする際には「シュミットトリガ回路」の解説(9)で解説した数式を用いています。
図1の回路は、R1やR2やR3をどの様な値に設定しても、シュミットトリガ回路として動作する訳ではありません。図1の回路がシュミットトリガ回路として安定に動作するためには、満たさなければならない3つの制約条件があります。
この制約条件については、「シュミットトリガ回路」の解説(8)で解説しています。
当サービスでは、これらの制約条件が満たされているかどうかの判定も行います。
制約条件が1つでも満たされていない場合は、動作解析の場合はR1やR2やR3の値を見直す必要があり、設計の場合はVTLHやVTHLの値を見直す必要があります。
制約条件を満たさない場合は、VTLHが高すぎたり、VTHLが低すぎたり、ヒステリシス(VTLH−VTHL)が小さすぎたり、Q2のhFEの最小値が低すぎたり、場合によってはVCCが低すぎたりします。