2019年12月02日 | 更新 |
シュミットトリガ回路(Schmitt trigger circuit)は、アナログ信号の電圧を閾値(しきいち)と比較し、2値化する回路において、入力にヒステリシスを持っている回路の事です。
シュミットトリガ回路は、入力がLからHに変化した後に少々電圧が下がっても、入力がHと認識され続けます。また、入力がHからLに変化した後に少々電圧が上がっても、入力がLと認識され続けます。この性質より、ノイズを含む電圧信号を2値化しても、出力にノイズの影響が出にくいという特徴があります。
また、反転型シュミットトリガ回路の出力に適切な時定数を持ったCR回路を接続し、その出力を反転出力型のシュミットトリガ回路の入力に帰還する事で、発振回路が構成できます。
低い電圧を入力すると出力がLになり、入力に高い電圧を入力すると出力がHになるシュミットトリガ回路を、非反転型シュミットトリガ回路(non-inverting Schmitt trigger circuit)と呼びます。非反転型シュミットトリガ回路は、シュミットトリガバッファ(Schmitt-trigger buffer)やヒステリシスバッファ(hysteresis buffer)などとも呼ばれます。
非反転型シュミットトリガ回路の回路記号を図1に示します。また、非反転型シュミットトリガ回路の入力電圧と出力電圧の関係を図2に示します。
図2に示した非反転型シュミットトリガ回路の入力電圧と出力電圧の関係を、表にまとめたのが表1です。
入力電圧 VIN | 出力電圧 VOUT | 備考 |
---|---|---|
VIN<VTHL | VL(L) | 必ずLが出力される領域です。 |
VTHL≦VIN≦VTLH |
直前の出力がVL(L)ならVL(L)を出力します。直前の出力がVH(H)ならVH(H)を出力します。
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Lが出力される場合とHが出力される場合とが混在するグレーゾーンです。直前の出力を維持する様に働きます。
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VIN>VTLH | VH(H) | 必ずHが出力される領域です。 |
非反転型シュミットトリガ回路においては、入力がLと認識されている状態から徐々に入力電圧を上げていって、入力がHと認識される様になる際の閾値VTLHと、入力がHと認識されている状態から徐々に入力電圧を下げていって、入力がLと認識される様になる際の閾値VTHLとが異なった値を取ります。(VTLH>VTHL)
非反転型シュミットトリガ回路の様に、入力がLと認識されている状態から徐々に入力電圧を上げていって、入力がHと認識される様になる際の閾値VTLHと、入力がHと認識されている状態から徐々に入力電圧を下げていって、入力がLと認識される様になる際の閾値VTHLとの2つに差がある2値化回路の場合、それらの差VTLH-VTHLの事をヒステリシス(hysteresis)と呼びます。
VTLH>VTHLが成立する2値化回路を「(入力に)ヒステリシスがある」と表現し、一方で、VTLH=VTHLが成立する2値化回路を「(入力に)ヒステリシスがない」と表現します。
そして、ヒステリシスのある2値化回路がシュミットトリガ回路なのです。図2を見ると、非反転型シュミットトリガ回路にはヒステリシスがある事が分かります。
図1や図2で非反転型シュミットトリガ回路を紹介しましたが、低い電圧を入力すると出力がHになり、入力に高い電圧を入力すると出力がLになる、反転型シュミットトリガ回路(inverting Schmitt trigger circuit)もあります。反転型シュミットトリガ回路は、シュミットトリガインバータ(Schmitt-trigger inverter)やヒステリシスインバータ(hysteresis inverter)などとも呼ばれます。
反転型シュミットトリガ回路のICで、比較的よく用いられるものに、74HC14が挙げられます。
反転型シュミットトリガ回路の回路記号を図3に示します。また、反転型シュミットトリガ回路の入力電圧と出力電圧の関係を図4に示します。
図4に示した反転型シュミットトリガ回路の入力電圧と出力電圧の関係を、表にまとめたのが表2です。
入力電圧 VIN | 出力電圧 VOUT | 備考 |
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VIN<VTHL | VH(H) | 必ずHが出力される領域です。 |
VTHL≦VIN≦VTLH |
直前の出力がVL(L)ならVL(L)を出力します。直前の出力がVH(H)ならVH(H)を出力します。
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Lが出力される場合とHが出力される場合とが混在するグレーゾーンです。直前の出力を維持する様に働きます。
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VIN>VTLH | VL(L) | 必ずLが出力される領域です。 |
反転型シュミットトリガ回路においても、入力がLと認識されている状態から徐々に入力電圧を上げていって、入力がHと認識される様になる際の閾値VTLHと、入力がHと認識されている状態から徐々に入力電圧を下げていって、入力がLと認識される様になる際の閾値VTHLとが異なった値を取ります。(VTLH>VTHL)
次のページでは、シュミットトリガ回路の利用用途や応用について説明します。