回路図に従って、基板に部品を半田付けすれば回路が組み立てられます。私の場合、最終的には両面基板を設計し、P板.comに発注しましたが、試作はユニバーサル基板で行い、動作の確認や定数の調整などを行いました。
上の写真は、最終的に作った両面基盤(左側)と試作で作ったユニバーサル基板(右側)です。
両者は、完全ではありませんがほぼ同一の回路です。両面基板を起こせば基板が小さくなると思っていましたが、期待したほどには小さくなりませんでした。ただ、ベタグラウンドの効果で、両面基板の方が動作波形がきれいになりました。
配線は、大きな電流が流れルートが短くなるように、また、太い配線になるように気をつけます。下の回路図で、赤線で示した部分に大電流が流れます。
下の写真は、試作で組んだユニバーサル基板の裏面です。0.5mmのすずメッキ線で配線しています。上の回路図の赤線部分に、特に太い配線を使っているわけではありませんが、本来はすずメッキ線2本で配線するなど、何らかの配慮をする方がいいところです。
両面基板の方は、シルク面、部品面、半田面のパターンを下図に示します。部品面はグラウンドがベタになっています。一方で、半田面はVCCがベタになっています。
EAGLEという回路図/基板CADの使い方の練習を兼ねて、上記基板を設計しましたが、EAGLEの使い方については、よくできた解説サイトが色々ありますので、ここでは基板設計の詳細については触れないことにします。
P板.comでこの基板を10枚作ったら、約2万円でできました。一昔前なら、どんな簡単な基板でも、初期費用は10万円以上したはずです。よい時代になったものです。
なお、両面基板を作ってから、一箇所間違いが見つかったので、下の写真のように、ジャンパ線が飛びました。一箇所パターンカットして、R100を付けています。(趣味で作っている基板だからよかったものの、製品設計なら結構時間的・金銭的なロスが出ているところでした。)
なお、パターンカットやR100の取り付けを行わなくても、通常の使用では正常に動作します。ただ、入力電圧をゆっくり上げると、出力(電池の充電用端子)に4V程度の高い電圧が出ます。電池をつないだ瞬間に正常な動作に戻るので、実害はないのですが、気持ち悪いので回路を修正しています。
この充電器には、半固定抵抗が1つ付いていて、充電終止電圧を調整するようになっています。その方法を説明します。
上の写真のように、ACアダプタなどで、CN1に電源電圧をかけてください。5V~12VのACアダプタが使えます。極性は、CN1の1番ピンが+側です。
次に、TP4(+側)とTP5(-側)の間の電圧を、テスタで測ります。写真のように、先端がクリップになったリード線を用意しておくと、計測に便利です。この状態で表示されている電圧(上の写真なら1.433V)が、電池の充電終止電圧になります。
電池の充電終止電圧は、温度により最適値が変わります。以前お話したように-3mV/℃の温度係数(1度上昇するごとに0.003V低下する)が望ましいのですが、この充電器では-4.7mV/℃の温度係数になっています。温度係数が理想値より若干ずれていますが、温度補正しないよりは良好な充電ができます。
VR1をドライバで回して、室温を考慮しながら、充電終止電圧を調整します。下の表を参考に、電圧を調整してください。
室温[℃] | 充電終止電圧[V] |
---|---|
0 | 1.568 |
5 | 1.544 |
10 | 1.521 |
15 | 1.497 |
20 | 1.474 |
25 | 1.450 |
30 | 1.427 |
上の表では1mV(0.001V)単位で電圧を表記しましたが、20mV位誤差があっても問題ないです。電池を充電してみて、不足充電になる(電池がすぐ切れる)なら、充電終止電圧は高めに、過充電になる(いつまでたっても充電が終わらない)なら、充電終止電圧は低めに調整してください。少なくとも、エネループなら、表2の通りに調整するとうまくいくはずです。
ニッケル水素電池を充電するには、下の写真のように、CN1にACアダプタ等の電源をつなぎ、CN2に電池ボックスを介して、電池をつなぎます。CN2は1番ピンが+側ですので、間違わないように注意してください。
充電中はLED1が点灯します。LED1が消灯すれば充電完了です。LED1が消灯しても、充電電流を絞ったトリクル充電は続き、電池の電圧を維持します。
なお、電池を充電器につないだまま電源を止めるのは、よくないです。わずか(1mA程度)ですが、電池から充電器に電流が逆流し、電池が少しずつ消耗します。充電が終わったら、電池を電池ボックスから抜きましょう。
この充電器は、2000mAhの容量のニッケル水素電池(単3型の標準エネループなど)を前提に設計しています。容量が30%程度違っても問題なく充電できますが、容量が大きく違う場合は、充電電流を加減する必要があります。
充電電流はR13で調整できます。標準ではR13は3Ωですが、他の抵抗値の場合の充電電流は0.6VをR13の抵抗値で割れば求まります。(例えば4Ωの場合は、0.6÷4=0.15Aとなる) 充電電流は、0.1Cにしてください。(つまり容量の0.1倍)
例えば、容量が1000mAhの単3型エネループライトの場合、充電電流は1000×0.1=100mA(0.1A)となります。この時のR13の抵抗値は0.6÷0.1=6Ωとなります。
容量が600mAhのの単4型エネループライトの場合、充電電流は600×0.1=60mA(0.06A)となります。この時のR13の抵抗値は、0.6÷0.06=10Ωとなります。
次のページでは、充電器の電流-電圧特性について書きます。