2019年04月24日 | 公開。 |
前のページから引き続き、高速ロジックアナライザLAP-F1(6464M)のアクティブプローブについて説明します。
パッシブプローブを使った測定と、アクティブプローブを使った測定の概略が分かった所で、写真で実例を見てみましょう。
普及型のロジックアナライザであるLAP-C(16064)のパッシブプローブを写真7と写真8に示します。
LAP-C(16064)の信号入力端子は、2.54mmピッチのピンヘッダになっています。そのピンヘッダに、バラ線を接続します。バラ線とはいっても、接続の手間が少なくなる様に、8チャネル分のコネクタが一体化しています。GND端子は各チャネルで共通になっています。
パッシブプローブの先端には、各チャネルごとに独立したピンソケットが付いています。これらを基板上のピンヘッダに接続して使います。
この様に、ロジックアナライザと被測定回路は、2.54mmピッチのピンソケットが両方に付いたメス―メスのケーブルを使用します。被測定回路の基板には、信号取り出し用のピンヘッダを付けておくのが原則です。
ただ、前もって信号取り出し用のピンヘッダが付いていない場合でも、写真13に示す様に、パッシブプローブ先端のピンソケットに、リード部品のリードから信号を取り出すためのクリップを取り付ける事もできます。このクリップを使うと、SOPなどの、一部のピンピッチが広い表面実装部品からも、信号を取り出す事ができます。
一方で、高速ロジックアナライザであるLAP-F1(6464M)の場合は、先ほど説明した様に、アクティブプローブを使用します。
写真10は、LAP-F1(6464M)の前面パネルの写真です。
全面パネルには、USBのAソケットの様なコネクタが32個並んでいます。試しに、LAP-F1(6464M)の電源が入っていない状態で、USBケーブルのAプラグを差し込んでみたら、ぴったりと差し込めたので、コネクタとしては、USB用のコネクタを使っているんでしょう。コネクタの樹脂部分が青いので、USB3.0用のコネクタだと思います。ただし、このコネクタでやり取りされている信号がUSB規格に準拠しているかどうかは定かではありません。
参考:USB3.0用のコネクタで受け取っている信号について筆者は、単に入力信号を2値化した信号を2チャネル分受け取っているだけで、USBのプロトコルには準拠していないと想像しています。その他に、ロジックアナライザ側から波形整形回路側に、2値化の際の閾値を設定するためのアナログ直流信号が出力されているのではないかと想像しています。この想像が正しければ、USBコネクタを使っているものの、中を通っている信号は、USBとは全く別物という事になります。
32個のコネクタのそれぞれにアクティブプローブが接続されます。一つのアクティブプローブには、2チャネル分の波形整形回路が入っているので、全部で32×2=64チャネルの信号が扱えます。
全面パネルに16チャネル分のアクティブプローブ(8本)を接続した状態を撮影したのが写真5です。
このアクティブプローブだけを撮影したのが写真11です。このアクティブプローブはLAP-F1(6464M)だけでなく、LAP-Fシリーズ共通で使えます。
このアクティブプローブは、写真12に示す様に、さらに3つの部分(同種の2本の線を1つと数えています)に分かれます。
これら3つの部分の内、長いケーブルの写真を写真13に示します。ZEROPLUS社のサイトを見ると、このケーブルには"USB3.0 probe cable"という名称が付いているので、やはりUSB3.0用のケーブルの様です。
波形整形回路の写真を写真14に示します。左側に観測する信号を入力するための4ピンのピンヘッダがあり、右側に写真13のケーブルに接続するためのUSB 3.0 Micro-Bコネクタが付いています。
写真14の波形整形回路のピンヘッダに接続する2本リード線を写真15に示します。
これらの2本のリード線は、それぞれを1チャネル分の信号の接続に使います。写真左側の2ピンピンソケットを、被測定回路のピンヘッダに接続します。写真右側の2個の1ピンピンソケットを、波形整形回路のピンヘッダに接続します。
黒い線(シールドケーブルのシールド線)がGND線で、白い線(シールドケーブルの内部導体)が信号線です。
各リード線には、チャネル番号が記された白い環が付いています。
写真14に示す様に、リード線には被測定回路につなげるための2.54mmピッチの2ピンピンソケットが付いているため、被測定回路には2.54mmピッチの2ピンピンヘッダが必要で、1ピンをGND、もう1ピンを信号線につなげておく必要があります。
通常は、被測定回路側に接続するコネクタから、ロジックアナライザに接続するコネクタまで全体(写真11)をアクティブプローブと呼んでいるのですが、LAP-Fシリーズでは、写真13のケーブルをUSB 3.0プローブケーブル、写真14の波形整形回路と写真15のリード線2本を合わせてアクティブプローブと呼んでいるようです。
LPF-Fシリーズのアクティブプローブ(写真14と写真15の部分)は何種類か用意されており、写真14と写真15に示したのはP120LVという型番の物です。
P120LVの電気的仕様を見ると、周波数帯域が120MHzで、入力インピーダンスが190kΩ±10%//4.3pF±2pFとなっています。LAP-C(16064)の場合は、帯域が75MHzで、入力インピーダンスが500kΩ//10pFなので、LAP-FシリーズにP120LVを付けて使う方が、LAP-C(16064)よりも広帯域で、入力インピーダンスも高周波ではLAPFシリーズとP120LVの組み合わせ(4.3pF)の方が、LAP-C(16064)(10pF)よりも高くなっています。
注意:LAP-C(16064)の入力寄生容量の10pFというのは、パッシブプローブであるバラ線を付けずに、ロジックアナライザ本体の入力端子(ピンヘッダ)で測った値だと思われます。パッシブプローブを接続すると、さらに数pF上昇すると想像されます。一方で、P120LVの入力寄生容量の4.3pFというのは、波形整形回路の入力端子(ピンヘッダ)で測った値だと思われます。P120LVの場合は、入力端子の先に付くリード線が短いので、リード線を付けても、LAP-C(16064)よりも寄生容量の増加は抑えられていると考えられます。よって、被測定回路から見た寄生容量は、P120LVとLAP-C(16064)で、データシート上の値以上に差が付くと考えられます。
ただし、低周波においては、LAPFシリーズとP120LVの組み合わせ(190kΩ)の方が、LAP-C(16064)(500kΩ)よりも入力インピーダンスが低くなる事に若干注意する必要があります。しかし、ロジックICの出力信号を観察するような用途では、P120LVの直流入力インピーダンス(190kΩ)が測定に影響する事はないでしょう。
LAP-Fシリーズのアクティブプローブには、P120LVの他にも、入力できる電圧の範囲を広げたものや、帯域をもっと広くしたものなど、全部で4種類(P120LVを含む)用意されており、用途に応じて使い分ける事が出来るようになっています。
この様に、LAP-Fシリーズのアクティブプローブは、下位機種のLAP-C(16064)のパッシブプローブよりも、広帯域で、入力寄生容量が低く、高周波領域で入力インピーダンスが低くなる様に作られており、高速・高周波の信号の観測に適する様になっています。
その分、LAP-FシリーズのアクティブプローブはLAP-C(16064)のパッシブプローブよりも構造が複雑で、取り扱いにくくなっています。
このページではLAP-F1(6464M)のアクティブプローブの特徴について説明しましたが、次回は他の部分の特徴について説明する予定です。続きを書くのはぼちぼちと。