Arduinoとホットプレートを使ったリフロー装置(2号機)の製作(7)

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2016年10月02日 公開。

8.温度制御の仕組み

今回製作した温度制御装置の温度制御の仕組みを、説明します。

8-1.リフロー作業の進み方

リフロー作業中の温度変化の様子を模式的に書いた図を図16に示します。この図には、温度プロファイルを決める11個のパラメータ(tchTchTP、ΔTP、ΔtP1、ΔtP2TR、ΔTR、ΔtR1、ΔtR2TC)が書き込んであります。

図16、リフロー作業中の温度変化とヒーターの状態
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図16、リフロー作業中の温度変化とヒーターの状態

表3に、11個のパラメータの簡単な説明を掲載します。

表3、温度プロファイルを決めるパラメータ
記号 名称 画面表示の
際の名称
意味
tch 加熱チェック時刻
チェック ジコク
tch以内に温度がTchに達しなければ、加熱不良とみなす。
Tch 加熱チェック温度 チェック オンド 同上。
TP 予熱時制御温度 ヨネツ オンド 予熱ステージにおけるPWM制御の中心温度。
ΔTP 予熱時温度制御幅 ヨネツ ハバ 予熱ステージにおけるPWM制御の温度幅。
ΔtP1 予熱時アイドル時間 ヨネツ アイドル 予熱ステージ初期における、ヒーターを停止する時間。
ΔtP2 予熱時間 ヨネツ ジカン 予熱ステージが継続する時間。
TR リフロー時制御温度 リフロー オンド リフローステージにおけるPWM制御の中心温度。
ΔTR リフロー時温度制御幅 リフロー ハバ リフローステージにおけるPWM制御の温度幅。
ΔtR1 リフロー時アイドル時間 リフロー アイドル リフローステージ初期における、ヒーターを停止する時間。
ΔtR2 リフロー時間 リフロー ジカン リフローステージが継続する時間。
TC 冷却終了温度 レイキャク オンド 冷却が終了し、温度制御装置が待機状態に戻る温度。
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図16を参照しながら、リフロー作業の進み方を、順に説明します。

8-1-1.加熱ステージ1

リフロー作業が始まると、まず加熱ステージ1になります。加熱ステージ1では、ヒーターは連続的に加熱状態になります。(図16の赤線部分はヒーターが連続加熱状態になっている事を示しています)

加熱ステージ1において、時間がtchになっても温度がTchに達していなければ、加熱不良としてエラーになり、この時点で強制冷却が始まります。

注:ただし、tchになる前に次の予熱ステージに進んだ場合は、このチェックは行いません。

8-1-2.予熱ステージ

温度がTPTP/2に達すると予熱ステージになり、温度上昇を一旦止め、基板の温度を均一化する様に温度制御します。

ここでTPは、予熱ステージのPWM制御における中心温度を表します。またΔTPは、PWM制御をする温度帯の幅を表します。(詳しくは後述)

予熱ステージになると、最初はヒーターを完全に止めてしまいます。(図16の青線部分は、ヒーターを止めた状態を表しています) ヒーターを止めても、しばらくは余熱でしばらく温度上昇が続きます。この余熱による温度上昇を短時間で止めるために、予熱ステージの最初に完全にヒーターを止めてしまいます。

予熱ステージが始まってΔtP1だけ時間が経過すると、PWM制御が始まり、出力を調整して温度を維持しようとします。(図16のオレンジ色の部分は、PWM制御により出力を調整している事をあらわしています)

8-1-3.加熱ステージ2

予熱ステージの最初から測ってΔtP2だけ時間が経過すると、加熱ステージ2になります。加熱ステージ2では、ヒーターは連続的に加熱状態になります。

8-1-4.リフローステージ

温度がTRTR/2に達するとリフローステージになり、温度上昇を止めます。

ここでTRは、リフローステージのPWM制御における中心温度を表します。またΔTRは、PWM制御をする温度帯の幅を表します。

リフローステージになると、予熱ステージと同様、最初はヒーターを完全に止めてしまいます。

リフローステージが始まってΔtR1だけ時間が経過すると、PWM制御が始まり、出力を調整して温度を維持しようとします。

8-1-5.冷却ステージ

リフローステージの最初から測ってΔtR2だけ時間が経過すると、冷却ステージになります。冷却ステージでは、ヒーターは停止します。

温度TCまで冷却が進むと、リフロー作業が終了し、温度制御装置は待機状態になります。

8-2.PWM制御

予熱ステージとリフローステージにおいて、ヒーター出力調整をして、温度を維持しようとします。この際に行うPWM制御について説明します。予熱ステージで行うPWM制御とリフローステージで行うPWM制御は、パラメータが違うだけで原理は同じなので、ここでは予熱ステージのPWM制御について説明します。

注:ホットプレートはむだ時間が30秒程度あり、ヒーター出力を調整しても、温度変化は急には追従しません。よって、特に短時間で終了しなければならないリフローステージにおいて、温度の平坦部を実現するのは困難です。そのため、実際の温度プロファイルは図8の様に、高温部がとがった形のグラフになってしまいます。それでも、PWMにより温度を平坦にしようとする事により、高温部の温度上昇のペースが低下し、ガラス蓋を取るタイミングのばらつきによる最高温度のばらつきが減るという効果は期待できます。

予熱ステージおよびリフローステージのPWM制御においては、2秒周期(0.5Hz)でリレーのON・OFF制御を行い、そのデューティ比(1周期の中で、ヒーターに通電している時間の割合)を変化させる事により、ヒーター出力を加減しています。

予熱ステージのPWM制御に関連するパラメータはTPとΔTPの2つです。

温度がTPTPより低い場合は、ヒーターに常時通電します。(デューティ比1)

温度がTPTPより高い場合は、ヒーターを完全に止めてしまいます。(デューティ比0)

温度がTP±ΔTPの範囲に入っている場合は、TPTPの時にデューティ比が1、TPTPの時にデューティ比が0になる様な1次関数の形でデューティ比の調整を行います。

以上より、温度とデューティ比の関係をグラフにすると、図17の様になります。これは、一般にP制御(比例制御)と呼ばれる物です。

図17、温度とデューティ比の関係
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図17、温度とデューティ比の関係

この様に、温度が高くなるほどデューティ比を下げて、ヒーターの出力を下げる事により、温度を一定に維持しようとします。

次回は、温度プロファイルを決めるパラメータを編集して、温度プロファイルの微調整をしたり、新しい温度プロファイルを登録する方法について説明する予定です。続きを書くのはぼちぼちと。

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