来年の春から小学生になる長男が、最近、よくひらがなの書き方を尋ねます。例えば「ひらがなの『み』って、どう書くんやった?」と聞かれて、実際に紙に「み」の文字を書いて見せてやるのですが、「こう書いて、筆順は・・・」などと説明していくうちに、「本当にこの字で合っているのか?」と不安になってきます。
この現象はゲシュタルト崩壊と呼ばれるようです。ゲシュタルト崩壊は、同じ文字を長時間注視していると、文字の構成要素がバラバラにみえ、全体を字として認識できなくなる現象です。
普段、メモなどを書く時には、ひらがなの書き方が分からなくなる事はありませんが、子供相手にゆっくりと書き方の説明をしていると、自分の字を注視してしまい、正しい字を書いているのか不安になるみたいです。
「み」だけではなく、他の色々なひらがなでもゲシュタルト崩壊を経験しましたが、気味が悪かったです。小学校の低学年を担当している先生も、ゲシュタルト崩壊をよく経験するのでしょうか?
なお、日本心理学会の漢字のゲシュタルト崩壊現象とは何でしょうかというページによると、ゲシュタルト崩壊について、次のような説明がありました。
末梢的な視覚情報処理過程の順応あるいは疲労のために生じるのではなく,部分を統合し,全体形態を把握するパターン認知の高次過程において,持続的注視による機能低下が起こるために生じるのではないかと考えられています。
ゲシュタルト崩壊では、視覚自体の機能が低下している訳ではないので、文字を構成する線は、はっきり見えています。しかし線全体を統合して、何の文字かを判断するパターン認知の機能に低下が起こる様です。
ところで、相貌失認という障害があります。これは、目、鼻、口などの、顔のパーツは、はっきり見えているのに、全体を統合して一つの顔と認識できなくなる障害です。そのため、人の顔を見ても、誰の顔かも分からないし、どんな表情をしているかも分からなくなるそうです。
相貌失認も、ゲシュタルト崩壊と同様、パターン認知機能の障害です。ただ、相貌失認が、頭部損傷・脳腫瘍・血管障害などの器質的障害を原因として起こるのに対し、ゲシュタルト崩壊の方は、健常者にも起こる、一時的な機能的障害であるのが興味深いですね。
参考までに、ゲシュタルト崩壊と相貌失認に関する動画を紹介しておきます。