パソコンのキーボードにウイスキーをこぼしたら、キーボードが故障したので、自分で修理しました。その時に行った修理の方法について書きます。
壊れたキーボードについて
私はノートパソコンを使っているのですが、普段はノートパソコンのキーボードを使わずに、USBキーボードを外付けして使っています。というのは、ノートパソコンのディスプレイを目から1メートルくらい離して使っているので、手がノートパソコン本体のキーボードに届かないからです。
使っているUSBキーボードは、ELECOMのTK-FCM005BKで、テンキーがない小型のタイプの普及型のキーボードです。何年も前に千数百円で買った記憶があるのですが、酷使しても壊れないので、気に入っていました。そう、ウイスキーをこぼして壊してしまうまでは。
ある晩、ウイスキーを飲んで、酔った勢いで仕事をしていたら、うっかりとグラスを倒して、キーボードがウィスキーをかぶってしまいました。そうすると、押しても反応しないキーが出てきたり、押していないのに文字が入力されるキーが出てきたりと、異常な動作をする様になってしまいました。ウィンドウが勝手にいくつも開いたり、メモ帳を開いたら勝手に「ううううううう・・・」と入力されたり、気持ち悪かったです。
キーボードのUSBケーブルをパソコンから抜いたら現象が止まったので、キーボードの故障と分かりました。パソコン本体は少し離して使っていたので、ウイスキーがかからずに済んだのが、不幸中の幸いです。
安物のキーボードなので、買いなおそうかとも思ったのですが、多分スイッチの接点がウイスキーで汚れただけなので、拭き取ると復活するだろうと思って、自分で修理する事にしました。
ところで、amazonで調べてみると、私の使っていたTK-FCM005BKが、まだ売っていました。しかも、新品にはすごくプレミアムが付いていて、1万6千円台です。(^^;
ちなみに、TK-FCM005BKと同程度の小型キーボードは、次の広告のように、千円ちょっとで買えます。テンキーの付いた大型タイプでよければ千円未満で買えます。
メンブレンキーボードの構造
普及型のキーボードは、ほとんどがメンブレン方式のキーボードです。機械接点方式の、スイッチを1個1個作るメカニカル方式のキーボードと比べると、メンブレンキーボードの場合は、印刷技術ですべてのキーの接点を一度に作ってしまえるので、安価に製造できるメリットがあります。(キータッチが良くないというデメリットもあります)
メンブレンキーボードの個々のスイッチ(メンブレンスイッチ)の構造を上の図に示します。
水色で示した樹脂基板には、スイッチの接点と、その接点への配線が導電インク(電気を通すインク)で印刷されています。上下2枚の樹脂基板は、導電インクを印刷した面が向かい合う様に重ねられています。
それら2枚の樹脂基板の間には、間隔を保つための樹脂スペーサ(紫色で示す)がはさまれています。
樹脂スペーサには、スイッチの接点部分だけ穴が開いており、樹脂基板を(キートップやラバーカップを介して)上から押さえつけると、上側の樹脂基板がたわみ、導電インク同士が接触する様になっています。この様にして、押さえた時に接点がONになります。
導電インクで印刷した樹脂基板2枚と樹脂スペーサだけでできたメンブレンスイッチをつかうと、主に産業用に使われる薄型のキーパッドができますが、スイッチのストローク(スイッチを押した時に沈み込む量)が小さいので、パソコンのキーボードには向きません。
そこで、ストロークを稼ぎ、打鍵感を向上するために、シリコンゴムのラバーカップや樹脂でできたキートップを使って、パソコン用のキーボードを作ります。
キーボードの分解修理の手順
それでは、実際に行ったキーボードの分解修理の手順を、写真を交えながら説明します。
次の写真は、修理前のキーボードです。
裏側は、次の写真の様になっています。赤色の矢印で示した部分に、合計12本のビスがあります。
この12本のビスをドライバーで外します。
キーボードの表の面の縁をマイナスドライバーでこじ開けると、キーボードが上下2つに分かれます。
上側にはキートップ、下側にはラバードームとメンブレンスイッチが付いています。下側に見える白いシートは、ラバードームを一体成型したシリコンゴムのシートです。
キーボードの下半分を取り出し、白いラバードームのシートを取り除くと、導電インクで印刷した透明な樹脂シート2枚の間に、穴の開いた樹脂シート(樹脂スペーサ)が挟まっている構造が、見えます。
白色に見えている配線は導電インクで印刷してできたものです。スイッチの接点になる部分は、丸いパッドが形成されています。
以上の様に、すべてのキーのラバーカップや、接点、配線などが、それぞれ一体成型で作られるため、メンブレンスイッチは、個別にスイッチを作る方法よりも安価に作れる事が理解できます。
キーボードにかけてしまったウイスキーは、導電インクの層やスペーサを汚したものと思われます。これをアルコールを浸み込ませた化粧落とし用のパフで拭き取りました。
その後、ドライヤーでアルコールを乾燥させました。熱風を吹きかけると樹脂が溶けるので、冷風を吹きかけました。
次に、キーボードの上半分の、キートップが付いている部分に注目します。
次の写真の様に、キートップの隙間には、いっぱいほこりが溜まっています。このほこりは、取り除かなくても、キーボードの動作には支障ありませんが、せっかくキーボードを分解したのですから、ほこりも取る事にしました。
なお、裏返してみると、すべてのキートップが1枚の樹脂の板に固定されている様子が分かります。
キートップを指で押すと、上の写真の×印の部分が飛び出してきて、ラバーカップを押す仕組みになっています。
キートップを表側から強めに引くと、キートップが取れます。スペースキーのキートップを外した様子を次の写真に示します。
何年も使っていると、すごくほこりが溜まっていますね。テプラで作った小さいシールが、キートップの裏側から出てきました。(^^;
全てのキートップを引き抜いた後に、ほこりをアルコールで拭き取ると、次の写真の様になりました。
下の写真は、キートップを取り付けなおしている最中の写真です。キートップを取り外すときには時間がかかりませんが、取り付ける時は、ジグソーパズルをやっている様で、キーの配置を確認するのに時間がかかりました。息子と一緒にキーの位置を探しました。
キートップを完全に取り付けると次の様になりました。
これに外枠を取り付け、キーボードの下半分とネジ止めすると修理終了です。
パソコンにつなぐと、無事に故障が治っていました。溜まっていたほこりもなくなって、気持ちがいいです。
安価なメンブレンキーボードをわざわざ修理する経済的な合理性は、あまりないのかもしれませんが、キーボードを分解すると、メンブレンスイッチの構造を目の当たりにできるので、ためになりました。また何年か、このキーボードを使うつもりです。