だんだん暑くなってきましたね。もうすぐ梅雨が始まります。湿度が高いと、カメラのレンズにカビが生えてしまいます。
また、冬場の話になりますが、高温多湿の室内に置いていたカメラを寒い室外に持ち出した途端に、レンズ内やファインダー内が結露して、ファインダー像が霧の中の風景みたいになってしまった経験が何度かあります。しばらくすると、だんだん結露はなくなって、元の状態に戻るのですが、気持ちのいい物ではありません。普段から湿度の低い所にレンズやカメラを保管する習慣を付ける方が良さそうです。
最近、ついヤフオクなどで安いオールドレンズを買ってしまい、レンズがたくさんたまってきました。
これらのレンズにカビを生やさないため、レンズを乾燥した状態で保管できるドライボックスを買いました。また、室内の湿度を調べるために、湿度計も買いました。
今回は、ドライボックスについて書きます。
湿度はレンズの大敵
レンズは、特に何も考えずに保管していると、それだけで光学性能が低下します。特に問題になるのが、レンズに生えるカビです。
私自身は、まだレンズにカビを生やした事はないのですが、ヤフオクで中古レンズを探していると、ジャンクレンズが良く出品されており、商品説明ページで、カビの生えたレンズの写真を見る事ができます。
カビがレンズに生えると、ソフトフォーカスになって、ピントに芯のない、ぼんやりした写りの写真しか撮れなくなります。また、逆光時にフレアが強く出るようになり、晴れた日の日中の撮影に大きな影響が出ます。
複数のレンズを持っておられる方も多いと思いますが、1つのレンズにカビが生えると、そのカビが胞子を大量に放出し、近くにある他のレンズにカビが生える原因になります。
カビの発生条件
カビの胞子は、どこに行っても、空気中に漂っています。その胞子がレンズ上で菌糸を伸ばし、活動するのを防ぐにはどうすればいいのかを考えてみます。
カビが活動するには、次の4つの条件が必要です。逆に言えば、次の4つの条件のうち一つでも欠けると、カビが活動できなくなります。
- 酸素
- 栄養分
- カビの活動しやすい温度
- カビの活動しやすい湿度
カビの繁殖を防ぐにためには、上の4つの条件のどれか1つ以上を成立しない様に管理すればいい事になります。
1の酸素を遮断するには、レンズを真空パックしたり、密閉して脱酸素剤を使うなど、非常に手間とコストがかかります。そのため、現実的ではありません。
2の栄養分に関しては、例えばレンズ表面に付いた手の脂を栄養にしてカビが繁殖しますから、普段のレンズの手入れで、レンズの汚れを落とす事には、カビ防止の効果がある程度はあるでしょう。
しかしカビは、プラスチックや塗料など、幅広い物質を栄養にして活動するので、レンズの汚れを落とすだけで、カビが防げるわけではありません。
3の温度についてですが、カビは0~40℃で活動し、特に20~40℃の温度でよく活動します。レンズを0℃以下、あるいは40℃以上で保管すればカビが生えない事になりますが、冷凍庫で0℃以下にすると、結露が凍結してしまいますし、40℃以上にキープするのは難しいと思います。また、レンズを高温にすると、レンズに使われているゴムやプラスチックが劣化したり、グリスが揮発したりして、レンズを痛めてしまいます。
よって、カビを防ぐために管理できるのは4の湿度だという事になります。
レンズを保存するのに適した湿度は40%~60%の範囲
カビの種類によって活動しやすい湿度の範囲が異なる様ですが、湿度を60%以下に管理すれば、カビの繁殖を抑えられます。
しかし、湿度を下げるほどいいというものではなく、あまり湿度を下げすぎると、レンズのために良くありません。湿度を下げすぎるとレンズに使われているゴムが劣化したり、グリスの揮発を促進してしまったりして、レンズを傷めると言われています。
電気式の防湿庫 VS 乾燥剤を使うドライボックス
レンズを湿度の低い環境で保管するには、電気式の防湿庫を使う方法と、レンズと一緒に乾燥剤をドライボックスに入れて密閉する方法があります。
電気式の防湿庫はコンセントにつないでおくだけで湿度管理してくれるのが便利
電気式の防湿庫は、コンセントにつないでおくだけで庫内の湿度を管理してくれるのが便利です。維持したい湿度を設定しておくと、庫内の湿度が設定湿度を上回った時だけ除湿してくれて、湿度を一定に保ってくれます。
注:防湿庫は、除湿の機能はありますが、加湿の機能はありません。よって、防湿庫が設置されている部屋の湿度が、防湿庫の設定湿度より低いと、防湿庫の湿度も下がってしまいます。
参考:上記リンクのリンク先サイトはD-Strageという防湿庫のメーカーの公式ブログです。
ただ、電気式の防湿庫は、乾燥剤をつかうドライボックスよりも高いですし、ある程度の設置面積が必要だという欠点があります。
乾燥剤を使うドライボックスは、価格が安く、狭い所で使えるのが便利
乾燥剤を使うタイプのドライボックスもあります。密閉できるプラスチックケースで、中に乾燥剤を入れる事で湿度を下げます。
ドライボックスは、密閉性が高い事を除けば、ただのプラスチックケースですから、低価格なのが長所です。また、複数のドライボックスを縦に積み上げる事もでき、狭い場所で使えます。
ただし、定期的な乾燥剤の交換が必要で、電気式の防湿庫より手間がかかります。
ランニングコストも、電気代だけで済む防湿庫よりは、乾燥剤の買い替えが必要なドライボックスの方が高くつくと思います。ただし、ドライボックスも、それほどランニングコストが高いわけではありません。
設置面積の小ささを優先してナカバヤシのドライボックスを購入
この様に、電気式の防湿庫と、乾燥剤を使うドライボックスでは、一長一短あるのですが、普段から仕事場の狭さに悩まされる私は、ドライボックスを買いました。
購入したのは、ナカバヤシのキャパティ ドライボックス 8L ホワイト(型番:DB-8L-W)です。ここから先は、このDB-8L-Wの紹介になります。
ナカバヤシのドライボックスのいい点は、湿度管理に絶対に必要になる湿度計が付属していて、低価格な点です。
この原稿を書いている時点でのDB-8L-WのAmazonでの価格は1,278円ですが、ドライボックス/防湿庫用の湿度計って、結構高いんです。例えば、ハクバのC-44という湿度計は、原稿を書いている時点でのAmazonでの価格は、794円です。DB-8L-Wはドライボックスに湿度計と乾燥剤が付いていて1,278円ですから、その安さが分かります。
DB-8L-Wのフタを開け、中を見てみましょう。
まずドライボックス本体です。この写真には手前に湿度計が写っていますが、この湿度計は取り外す事が可能です。
フタを横から見ると次の様になります。このふたは、本体側についているロック用の爪で固定されます。
フタを本体のロック用の爪で固定した様子を写したのが次の写真です。
フタの裏側は次の写真の様になっています。本体との接触部に、シリコーンゴムでできたパッキンが付いているのが分かります。
また、次の写真に示す様な、トレーが付属しています。
上のトレーの奥の方の窪みは小物入れで、レンズのフィルターやマウントアダプターなどの小物を入れます。手前は乾燥剤を入れる部分です。
乾燥剤としては、次の写真に示す様なシリカゲルが入っています。
上の写真のシリカゲルをビニール袋から出し、トレーの乾燥剤入れに入れると、次の写真の様になります。
トレイを本体に装着すると次の写真の様になります。
ドライボックスにカメラやレンズを入れると、次の写真の様になります。
この状態で、フタを閉めれば、1~2時間程で湿度が下がってきます。
なお、付属している湿度計には、レンズの保管に適した湿度である40%~60%の範囲に、緑色の帯が描いてあり、適切な湿度の範囲に入っているかが、一目で分かる様になっています。
この湿度計の精度は、説明書によると、±5%の様です。これは、レンズの湿度管理には十分な精度です。
湿度計の精度については、また回を改めて書こうと思います。
ドライボックスをしばらく使っていると、シリカゲルの吸湿性が下がってきて、湿度を十分下げられなくなります。どのくらいの期間で吸湿性が下がるかは、ドライボックスの開閉の回数や時間によりますが、1~3週間程度です。
シリカゲルの吸湿性が下がってきたら、不織布の袋(シリカゲルと書いた白い袋)に入れたまま、シリカゲルを500~700Wの電子レンジで2分ほど加熱すると、吸湿性が元に戻ります。
加熱後のシリカゲルは熱いので、取り出す時にやけどをしない様に注意してください。また、シリカゲルが十分冷めてからドライボックスに戻す様にしてください。
シリカゲルの粒々の中に、少しだけ色が付いた粒が混ざっています。その色がピンクだと、吸湿性が落ちている目印になります。
シリカゲルが不織布の袋に入っているので、色を確認しにくいのですが、光に透かして見るようにすれば、色を確認できます。
吸湿性の落ちたシリカゲルを電子レンジで加熱し、再生すると、色のついたシリカゲルの粒が青色になります。この青色が、吸湿性の回復した目印になります。
この様に、吸湿性の下がったシリカゲルも、電子レンジで加熱して吸湿性を回復できますが、徐々にシリカゲルが劣化していって、電子レンジで加熱しても再生できなくなります。
私は現在3~4回シリカゲルを再生していますが、今のところ問題ありません。何回再生できるかは、説明書にもはっきりとは書いてありませんし、今のところ分かりません。
シリカゲルが劣化したら、新しい物に交換する必要があります。カメラのレンズ専用のシリカゲルもありますが、100円ショップで売っている、食品保存用のシリカゲルが使えると思います。
シリカゲルを新品に交換する場合は、あまり大量のシリカゲルを入れて、ドライボックスの庫内を乾燥させすぎない様に気を付けてください。
ドライボックス用の乾燥剤については、また回を改めて、詳しく書きたいと思います。
参考までに、DB-8L-Wに付属していた説明書の写真を載せておきます。
大きめのドライボックスを買うより小さめのドライボックスを2個買うのがおすすめ
ナカバヤシのドライボックスには、大小さまざまな製品がラインナップされています。
私はそれらの中で、最小の8リットルの製品を2つ買いました。
ドライボックスのフタを一度開くと、一気に庫内の湿度が上がり、フタを閉めても1~2時間待たないと、湿度が下がりません。1本のレンズを取り出すと、同じドライボックスに入っていた他のレンズも湿気にさらされます。
また、フタを開くと、シリカゲルの吸湿性も急激に低下していきます。
要は、フタを開閉する機会をなるべく減らし、ドライボックスのフタは、できるだけ閉めたままにするのが好ましいのです。
室内で撮影を行う場合、私は必要と思われるレンズをまとめてドライボックスから出し、撮影後にまとめてドライボックスに戻す様にしています。この様にする方が、必要に応じて順次レンズを取り出すより、フタの開閉が減らせるからです。
しかし、この様に工夫しても、カメラを使う限り、ドライボックスのフタの開閉を0にはできません。
そこで考えたのが、小さめのドライボックスを2個用意して、1個には室内でマクロ撮影する時によく使う、マクロレンズや広角の単焦点レンズ(リバースアダプタを使えばマクロ撮影につかえます)を収めておき、もう1個には、室外で使う事の多い標準ズームレンズや望遠ズームレンズをいれておく方法です。
私は、室外で撮影するより、室内で電子部品や電子基板などのマクロ撮影をする機会の方がずっと多いので、マクロ撮影に使うレンズを1個のドライボックスに入れておくと、もう1個のドライボックスのフタを開ける機会がずっと減るのです。
使用頻度により2個のドライボックスに分けてレンズを保管する事により、あまり使用しないレンズが入ったドライボックスはフタをあまり開けなくなるので、レンズが湿気にさらされる機会が減り、乾燥剤の再生や交換の回数も減ります。
別の機会に記事にする予定ですが、乾燥剤の種類により、効果に即効性があるものの持続期間が短いタイプの物(DB-8L-Wに付属しているシリカゲルがこのタイプ)と、効果が出るまで時間がかかるものの持続期間が長いタイプ(生石灰など)があります。
参考:生石灰は、効果の持続期間が長いものの、加熱して再生する事ができません。
使用頻度の高いレンズを入れるドライボックスには即効性のある乾燥剤を、また使用頻度の低いレンズを入れるドライボックスには効果の持続期間が長い乾燥剤を使う事により、使用頻度の低いレンズを入れる方のドライボックスは、長い期間、メンテナンスをせずに放置する事ができるようになります。
一方で、使用頻度の高いレンズを入れるドライボックスは、湿度も出し入れの度にチェックするでしょうから、乾燥剤の再生や交換もその際にできます。レンズは高い湿度にさらされる時間が長いものの、頻繁にアルコールで拭くなどしてメインテナンスをするので、カビが生えにくいと思うのです。
即効性のない乾燥剤を、使用頻度の高いレンズを保管するドライボックスに使うと、湿度が十分下がるまでにまたフタを開けてしまい、レンズが常に湿気にさらられている状態になりますので、注意が必要です。
まとめ
今回は、梅雨に備えてレンズのカビを防ぐために、私が買ったDB-8L-Wというドライボックスをご紹介しました。湿度計やシリカゲルが付いて千円台で買える、使いやすくてリーズナブルな製品です。
合わせて、次の様な事もご紹介しました。
- 電気式の防湿庫はメンテナンスの手間がかからないが、高価で場所を取る。
- 乾燥剤を使うドライボックスは安価で狭い場所でも使えるが、乾燥剤の再生や交換の手間がかかる。
- 乾燥剤式のドライボックスを使う場合は、使用頻度の低いレンズ用と、使用頻度の高いレンズ用の、2個のドライボックスを使い分けると良い。
- 乾燥剤の種類により、即効性のあるなしの違い、効果の持続期間の違い、再生できる物とできない物の違いなど、色々な違いがある。(詳しくは別の記事で解説する予定)
この記事が、皆さんが梅雨を乗り越える役に立てば幸いです。