Arduinoとホットプレートを使ったリフロー装置(1号機)の製作(3)

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2015年12月12日 枠のないステンシルとゴムへらについての説明を追加した。
2016年09月12日 「Arduinoとホットプレートを使ったリフロー装置の製作」から「Arduinoとホットプレートを使ったリフロー装置(1号機)の製作」へ改題。

参考:この連載で説明している温度制御装置の改良版について書いた記事もあります。あわせてご覧ください。

4.リフローによる表面実装部品の半田付けの方法

4-1.リフローによる半田付けに必要な3工程

今まで、手半田の方法の説明をしてきましたが、いよいよリフロー装置(リフロー炉)を用いた半田付けの方法を、説明します。

リフロー装置を用いる半田付けには、大きく分けて、以下の3つの工程があります。

  1. クリーム半田の印刷
  2. 部品の基板への実装
  3. 基板の加熱・冷却

上記の3工程は、1番から3番への順に処理します。それでは、それぞれの工程について順に説明しましょう。

4-2.クリーム半田の印刷工程

この工程では、基板のパッドの上に、クリーム半田(半田ペーストともいう)を印刷します。

クリーム半田とは、フラックスの中に、直径の小さな顆粒状の半田を均一に拡散させたものです。灰色のクリームのように見えます。

下の写真は、クリーム半田の一例です。この半田は、スズ96.5%、銀3.0%、銅0.5%の組成の合金の、いわゆる鉛フリー半田で、融点は217℃です。半田粒子の直径は24~45μmです。鉛入りの半田なら、スズ63%、鉛37%の合金で融点が183℃の物があり、融点が低いことから、鉛フリーの半田を使う方より半田付けが容易です。しかしながら、リフローによる半田付けでは、手や机などにクリーム半田が付着する危険性が高く、健康上の理由から、私は必ず鉛フリー半田を使うことにしています。

なお、写真に写っているクリーム半田は250g入りですが、クリーム半田の寿命は、冷蔵庫で保存しても半年程度であり、アマチュアであれば、有効期限内に250gを使い切るのは難しいかも知れません。

写真23、クリーム半田
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写真23、クリーム半田

クリーム半田を基板のパッド上に、パッドの形に印刷するには、ステンシル(金属製の場合はメタルマスクともいう)と呼ばれる、穴の開いた薄い板を使います。基板の上に、位置を合わせたステンシルを起き、クリーム半田をその上からなすり付けるようにして印刷します。

次の2枚の写真は、金属製ステンシルの一例です。下の写真ではステンシルの上に、このステンシルに対応する基板を並べてみました。この写真を見ると分かるように、ステンシルには、基板に搭載される表面実装部品のパッドの形に合わせた穴が開いています。(リード部品はリフローで半田付けしないので、リード部品用のパッドに対応する穴は、ステンシルに開けません)

写真24、金属製ステンシル
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写真24、金属製ステンシル
写真25、ステンシルの穴と、基板のパッドの対応
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写真25、ステンシルの穴と、基板のパッドの対応

2015年12月12日追記

上の写真では、枠のあるステンシルを使っていますが、この枠は、クリーム半田印刷装置に固定するためのものです。手作業でクリーム半田の印刷をする場合は、この枠は何の役にも立たないばかりか、重量が増すので、作業性が低下します。また、ステンシルを輸入する場合は、枠があると、その重量のため、航空運賃がとても高くなります。

ただ、このステンシルを購入した当時は、枠のないステンレス製のステンシルを安価に購入する方法がありませんでした。(耐久性の低い樹脂製のステンシルなら、枠なしで購入できた)

現在では、ELECROWSeeedで枠なしのステンレス製のステンシルが購入できますので、新規でステンシルを発注する際は、枠なしのものを指定しています。

写真26、枠なしのステンシル
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写真26、枠なしのステンシル

クリーム半田は通常冷蔵しますが、使用する数時間前には冷蔵庫から出して常温に戻しておきます。そして、固定した基板の上に、穴の位置を合わせてステンシルを置き、その上からなするつけるようにスキージ(へら)でクリーム半田を伸ばしていきます。スキージという言葉は、本来は接触面がゴム製のものを指すようですが(Wikipediaを参照)、私はプラスチック製のへらで代用しています。

基板を机に固定するには、固定したい基板の周囲四方に不要な基板を置いてテープで止めます。こうすることで、基板自体は机に貼り付けることなく、水平方向へのズレを防ぎます。一般には周囲の4枚の基板は机に、直接テープで固定する事が多いみたいですが、私は大きめのプラ板の上に基板をテープで貼り付けています。そうすることで、作業をするたびにテープを貼ったりはがしたりする手間が省けます。また、プラ板の面積が大きいと、机とプラ板の間も、摩擦で意外とずれにくいものです。

写真27、基板の固定
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写真27、基板の固定

クリーム半田は、スキージで2回に分けてステンシルの上から塗ります。

1回目はスキージを45゚程度の角度に寝かせて、ステンシルにクリーム半田を厚く塗りつけるようなイメージで伸ばします。

写真28、クリーム半田の塗布(1回目)
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写真28、クリーム半田の塗布(1回目)

2回目は、スキージを垂直に近い角度に立てて、ステンシルに塗りつけたクリーム半田をこそぎ落とすように動かします。

写真29、クリーム半田の塗布(2回目)
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写真29、クリーム半田の塗布(2回目)

2015年12月12日追記

この記事を最初に書いた当時はスキージとしてプラスチック製のへらを使っていましたが、現在はダイソーで買ったゴムへらを愛用しています。プラスチックよりも密着性が良いので、仕上がりも良くなります。

写真30、ダイソーで買ったゴムへら
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写真30、ダイソーで買ったゴムへら
写真31、ゴムへらと枠なしのステンシルを使ったクリーム半田の印刷風景
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写真31、ゴムへらと枠なしのステンシルを使ったクリーム半田の印刷風景

この後ステンシルをはがすと、表面実装部品のパッドの上にクリーム半田が印刷されています。次の2枚の写真は、上側がクリーム半田印刷前の基板の写真で、下側がクリーム半田印刷後の基板の写真です。(ちなみに、この基板は122X32モノクログラフィックLCDシールドRev.C基板です)

写真32、クリーム半田印刷前の基板
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写真32、クリーム半田印刷前の基板
写真33、クリーム半田印刷後の基板
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写真33、クリーム半田印刷後の基板

これら写真を比較すると、表面実装部品のパッド部分にだけ、灰色のクリーム半田が印刷されている様子が分かります。

次の2枚の写真は、クリーム半田の印刷の様子が分かりやすいように、U1(0.8mmピッチ、32ピンTQFP)の周辺を拡大したものです。上側がクリーム半田印刷前で、下側が印刷後の写真です。

写真34、クリーム半田印刷前のTQFPのパッド
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写真34、クリーム半田印刷前のTQFPのパッド
写真35、クリーム半田印刷後のTQFPのパッド
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写真35、クリーム半田印刷後のTQFPのパッド

おおむね良好にクリーム半田が印刷されている様子が確認できると思います。

現状では、基板部分が机から盛り上がる形になって、金属製のステンシルが少し反った形になっています。ステンシルの外枠の下に、適当な厚さのスペーサを設けると、ステンシルと基板が密着して、さらに良好な印刷ができるのではないかと考えています。

クリーム半田の印刷が終わったら、余ったクリーム半田は容器に戻し、汚れたステンシルなどを消毒用アルコールでふき取ってください。

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4-3.部品の基板への実装工程

クリーム半田が基板に印刷できたら、次に表面実装部品を基板に載せていきます。工業的にはチップマウンタと呼ばれる装置を使って、目にも止まらぬ速さで部品を載せていくのですが、とても高価で大きな機械なので、個人で所有するのは無理です。ここは我慢してピンセットで部品をつかみ、一つ一つ手作業で部品を載せて行きます。ちなみにこの工程が、最も時間がかかり、最も根気が必要な工程です。

写真36、0.8mmピッチ、32ピンTQFPを載せる作業
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写真36、0.8mmピッチ、32ピンTQFPを載せる作業
写真37、2012サイズの抵抗を載せる作業
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写真37、2012サイズの抵抗を載せる作業

部品が全部載せ終わると、次の写真の様になります。

写真38、部品を載せ終わった基板
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写真38、部品を載せ終わった基板

なお、部品を基板に載せてしまうと、次の加熱・冷却工程が済むまで、基板がとても不安定な状態になりますから、取り扱いに神経を使います。うっかりとシャツのすそなどが基板に触れたりすると、次の様な状態になってしまいます。(T_T)

写真39、加熱・冷却工程前に部品に触れて起こった事故
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写真39、加熱・冷却工程前に部品に触れて起こった事故

次のページでは、基板の加熱・冷却の工程の説明をします。

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